Fate/twilight world

□1.じゃーん! せーはいせんそーさんかのあかしですよ☆って
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 先のモノを夢という形で見たのだと理解したのは、視界が鮮明に辺りを映した数分間の間だった。

(……夕日…。いつの間に寝たんだ…私…)

 重い体に鞭を打ち起こすも、その目は無機質にただぼけーっと赤い空が広がる窓の外を眺める。寝起きだからか、脳がまだ覚醒しきっていないのだろう。ゆったりとした動きで辺りを見回す様に頭を降ると、その場所がどこかの豪邸である事を認識する。

 赤い絨毯に金の脚の机に金の脚の椅子。女性向けの立派な装飾のされたドレッサーや棚。大きな開かれた窓の先は、誰もが憧れているバルコニーがあり、カーテンはレースというなんとも乙女チックなデザイン部屋だ。自分が今まで寝こけていたベッドも、天井付きの所謂お姫さまベッドらしきモノ。

(誰の趣味なの、このお姫さま感溢れる部屋は)

 部屋は無装飾の白一色が好みなんだけど、なんて考えてたらキリがないので、目を擦りモソモソとベッドを這っていつも側にいる筈の存在を捜してみる。

「える?…いる?」

 呂律の回らぬ口でひと言そう言うと、ふいに私の座り込むベッドの端の方、ちょうど目の前にあたる位置で淡い緑色の軟らかな髪と白い装束が靡いた。

「あぁ、居るとも。おはよう、マスター」

 女性の声とも聞き取れるし男性とも取れる声が、心地よく耳に木霊した。その性をつけがたい体から森の香りが漂ってくるあたり、やはりその肉体は大元は土なのだと反射的に思わせる。

「おはよう、と言っても、もう夕方だけどねぇ」

「ふむ…。じゃあ、“こんばんは”がいいかな?」

 どうだろうね。なんて、至極平凡な会話をして笑う当たり前で差し障りない空気だが、その姿は、お互いに服が汚れ、破れ、ボロボロだった。この訳を話せばとんでもなく長くなるのだが、それを敢えて簡潔に言うと、私は今まで“眠っていた”のではなく、“死んでいた”が正しくなる。

否、“死んでいた”のではない。既に死んだが、彼が[私]を人の体に“繋ぎ止めた”結果、生きていられるが正しいか。

 どちらにせよ、私が、元々いた世界に私の存在があると問題が起きる、と言う設定に書き換えてしまった為に、彼が私を抱えて時空を飛び、此処に運んだのだろう。

 幸か不幸か、この世界で私が生活できる様に“黒服の男”が様々な準備をしてくれた様だ。恐らく、時空を飛ぶときも“あの子犬”が大きくなって“仕事”を全うしている最中、合間をぬって運んでくれたに違いない。本当、頭が上がりません。感謝、感謝。

 とまぁ、そんな感じで此処にいれている訳だが、まずは着替えたいのが両方の第一の声と言えよう。

「エル、貴方の着替えはあった?」

「うーん、それなりにはあったかな。趣味は良かったんだね、彼」

 ニッコリsmileが美しいが言ってる事は、大変失礼な事である。助けられた側だが仕方ない。この子はあの男が嫌いだし、姿を見ただけで宝具の展開は絶対だし、必ず一度は殺しにかかる。一体、貴方はどこでそんな事覚えたの、エルキドゥ。

 なんて考えたって仕方ない。まずは、粗探しだ。

「よーし!まずは着替えて、その後でこの世界がどこなのか調べよっか!」

「うん、異論はないよ」

 そうと決まれば、やる事は簡単だ。着替えたら家中隅々まで調べつくすのみ。

 私達は、其々お互いに別れて行動を始めた。その時、気づけば良かったのだろう。この屋敷の大きさが半端なく大きく、広く、粗探しするにも数時間は掛かると言う事実に。だが、二人がそれを知る事はなく。夜中までぶっ通しで粗探しをしていた二人が合流した時には、また始まりと同じボロボロな姿だった。
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