Fate/twilight world

□れっつごー!らんさーとたんけんなう☆
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 ───時刻は、夜の7時をまわった頃。すっかり外は暗くなり、星が瞬いている。若干肌寒いこの時期、あの壊れた部屋をあのままにしておくのは少し、否、かなりキツいものがあった。それだけに、幼い頃に教わった基本魔術の応用として覚えた、木を自在に組み合わせる魔術で屋根と壁をつくり、雨風を凌げる様にそれをより強固に何層も重ね合わせ、応急処置を施していたのが、あの後の事だ。

 私がそれだけの魔術を使える事に驚いたのか、ディルムッドは少しだけ目を見開いていた。見慣れていたエルキドゥと言えば、花を手に何やら楽しそうにしていた。何かまた作っているのだろうか。

 と、そこは良いとして。

 まぁ、そんな感じで部屋に修繕を行った私は、とりあえず今後の方針をどうするかをディルムッド達と話し合うため、リビングに向かい紅茶を淹れる準備をしているのだが…。

「主、その……」

「あぁ…。いいよ、気にしなくて。いつもの事だから」

「いつも、とは?」

 エルキドゥが笑いながら頬杖をつくと、私が彼のかわりに説明する様にポツリと言う。

「…知り合いが…ヴァルトゥームの一部を紅茶の茶葉にしやがってくれたんだ、それだけ」

「なんと…!ばるとぅーむ…と言うのは、毒の一種なのですか?」

「邪神の子供の一人」

「……今なんと?」

 だから、邪神の子供。そうもう一度言うと、ディルムッドは唖然とした顔で立ち竦み、エルキドゥは吹き出し笑いを溢した。そりゃ驚くだろうさ。邪神の子供の一人である言わば悪魔の花の一部が紅茶の元としてこの家にあるのだから。

 茶葉をゴミ箱に捨てて、マトモなレモネードの茶葉の箱を開けて中身の臭いを確認し、それをポットに入れてお湯を沸かしながら続けて話す。

「私、昔からどうも神様とかサーヴァントとか、そういった者に好かれやすくて、だからかこんなもの貰いやすくって」

「貰う」

「あ、でも大丈夫。慣れてるから見わけはばっちりなんで!」

「慣れ、てる……」

 ディルムッドは、段々と自分のマスターが危ない輩に好かれやすい体質であると知り始めると、顔から血の気が引くのを感じた。そんな目に遭いながら貴方はこれまでよくご無事でしたね、と言う悟りに近い者が胸に生まれたからだ。

 無論、私がそれを知ることはなく。数分で沸いたお湯をポットに入れておぼんにカップとポットを乗せ、エルキドゥが座るソファーの前にあるテーブルに置く。

「まっ、私の事はさておき!ディルムッドさんだっけ?そこ、掛けて楽にしてください!話をしましょう」

「いえ!従者が主と同じ席に座するなど──」

「ディルムッドさん」

 一度は断ったディルムッドだが、目があい、断りきれない事を悟ると、彼は渋々エルキドゥとは反対の左側に座った。二人の間にして真ん中のソファーに座り、カップに出来立てのレモネードを注ぐと、一つ、また一つと其々の前に置く。

「──さて、大分時間がたってしまったけれど、本題に移らせて貰おう。話といっても質問に答えてもらえればそれでいい」

 カップを手に持ちレモネードの柔らかな薫りに浸りながら、私はひと口それを飲むと、ディルムッドの緊張した面持ちを和らげる様に、僅かに微笑む。





「ディルムッドさん、貴方は聖杯に何を望みますか?」
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