story2 (BL)
□届かない声
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「僕、トーカちゃんと結婚しました」
生きてきた中で初めての失恋、それは突然告げられる
「Wedding ceremonyをしなければいけないね」
咄嗟に出たのはその言葉
あまり驚きはしなかった。いつの間にか、2人の距離が近くなったことは気付いていたからだ。そのおかげで、思ったよりあっさり現実を受け止めることが出来た
相手は男性だ。それも出会いは彼にしてみれば最悪
初めから一切望みなんてない恋、それでも"愛おしい"と思った僕の負けだったのだろう
___まったく、凄いよ君は
そう、心の中で小さく呟く
「そんな…結婚式なんて、出来るんですか……?」
照れ臭そうに、そして何処か不安そうに彼が視線を向けてくる
「問題ないさ、僕に任せたまえ。……大切な事だろう…?」
そう、大切な事
愛しい彼が愛しい人と結ばれたんだと実感して貰うため、これから寄り添い歩いて行くという決意を示して貰うため、一生に一度の人生においての大切な瞬間
……僕自身が諦めを付けるための行為でもある。そこでソレを目の当たりにしてしまえば、きっと認めざる得ない
ならばせめて、僕が飾り付けてあげたいという下らない意地だ
「そうですね…、じゃあお願いします」
あんな風に笑う彼は初めて見る
……少し、胸の奥がジクリと痛んだ
教会で式を挙げようと考えたのは、数日後のこと
ふと、あの日の事を思い出した
彼を食べようとして、彼と彼女に敗北したあの日
今思えば、もうあの日から彼は手に入らないと決まっていたのかも知れない
「ここにテメェのものなんか ひとつもねぇんだよ」
懐かしいね、その通りだ霧嶋さん
僕のものなんて何一つとしてなかった
過去も今も
その事実を刻み付けるために、僕の運命が動いた場所で、終わらせる
それが愛する人の晴れ舞台なんて、ほら 素敵な話だろう?
花を飾って、衣装を渡して、
主役が揃えば 始まりだ
終わらせるんだ、この不毛な恋を