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□湯上りのうたた寝
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後ろ手で扉を閉めながら濡れた髪をタオルでワシワシ拭く。
ソファーに座ってスマホをいじっていると睡魔が襲ってきた。この季節だから間違っても風邪をひくことはないが目が覚めた時の不快感はひとしおだろうなと思うのに体はいうことを聞かない。
「そこで寝ちゃうの?髪乾かしてからにしなよ」
よく知った声が耳朶に浸透していくがうまく反応できない。
答える代わりに俺は手をゆるりとあげた。


「そこで寝ちゃうの?」
うしろから、濡れた髪を見下ろして頭を包むように両手を降ろすと、彼の手が伸びてきた。
ひどく優しげな仕草で私の頬を数回撫でるとなんでもなかったように離れていって、私もなんとなしに彼の首にかけられたタオルを取ると彼の髪を包んで水気を飛ばす。
「雨に濡れた猫みたい」
「……そこは、ライオンで…」
言葉が途切れ、首が傾いだ。どうやら眠ってしまったらしい。
まだ僅かに水分を含んだ髪を撫で、わたしは笑う。
「おやすみなさい。トミー」

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