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□入れ替わり
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目が覚めたら、自分がいて思わず頬をつねった。覚めるわけでもないそれは現実そのものだ。
「あ、あの……」
声を出してみて、それがトミーであることに気が付く。
寝る前の記憶を思い起こし、#モジヤンがカンタに編集の仕方を教えて貰いに来てそれに同行し、数分で飽きた私はソファーで眠る彼にダイブして夢の世界へ旅立ったのだ。
ずっしりとのしかかってくる確かな重さによく起きなかったなトミさん。と場違いな関心をしてしまう。

「起こしたほうがいいのかな……」
すやすやと規則正しい寝息を立てて眠る私…もとい彼にそっと手を伸ばす。自身の頭を撫でると気持ちよさげに
身じろぎをして、余計変な気持ちになってしまう。

「トミーさん。トミーさん。」
結果として起こすことにして、私は彼に控えめに声をかける。

「……ん?」
うっすらと開いた瞼は、次の瞬間見開かれ瞬時に私の上からどいてしまう。
しまった。腰に手をまわしておけばよかった。
やはり場違いなことを思っていると、彼には珍しく動揺した様子で今の自分の腕を伸ばしたりして眺めまわし、次いで私を観察する。
「こ、これは……」
「入れ替わったみたいですね。私たち。」
「なんでお前はそんなに平然としてんだ!!」
「え、だって役得かなって」
「全然得じゃねえよ!なんでこんなことになってんの!?こんなの漫画とかアニメの話じゃん!フィクションなはずじゃん!!」
「ところがどっこい、ノンフィクションなんだなこれが」
「どや顔すんな!むかつくから親指立てんな!!」

すごい混乱っぷりだ。本当に珍しい。
「落ち着けよ。モノンノ」
いつものトミーさんを思い描いて言ってみると、俺はモノンノじゃない!と反論される。
仕方がないので立ち上がり、キッチンまで歩くと冷蔵庫の扉を開ける。
すごい。当たり前だけど視界の高さまで違うんだ。
中にあった野菜ジュースを取るとコップを二つ持って今度は頭を抱えて考え始めた彼に一つ差し出す。
「ほら、これでも飲めよ」
「ねえ、俺の真似すんの、余計こんがらがるからやめてくんない」
「ちぇ〜」
「唇も尖らせんな。キモイ」
「はいはい」
いちいちうるさい彼に素直頷くと改めてコップを差し出す。

「とりあえず落ち着こうよ」
「それなんだけど、モノンノ。わりぃ」
「?なんで謝って……」
「俺さ、トイレ。行きたくなったんだけど」
「……れ」
「なに…」
「戻れ戻れ戻れおらあああああああ!!!」
容赦せず自身の顔に往復ビンタをかます。
「痛い痛い痛い!!おま、手加減しろよ!!」
「別に私の体だからいいんです!!あああ天下のNHK様に!YouTube会のNHK様になんてことをさせるんじゃ神様あああ!!!!」
「意味わかんねえしそろそろ限界だからどうすりゃいいのか言えよ!」
「展開早すぎる!!どうすればいいかなんて私から言わせないでよエロ神いい!!じゃあ下!下は見ないで!絶対!!」
「わかった!」
彼がトイレに消えて思わずダイニングテーブルの椅子にへたりこむ。
まさかこんなに早く入れ替わりの弊害が来るとは思ってなかった。
「どんだけせっかちな神なのよ……」
ぐったりつぶやいていると、申し訳なさそうに彼が戻ってきた。
そして、私自身気づきたくなかった出来事に気づく。
「……モノンノ。戻ったんだけど…」
顔を伏せたまま、彼の声で悲痛な声をだす。
「とみ、さん」
「今はお前がトミーだけどな。なんだよ。」
「今度は私がトイレに行きたくなっちゃった」
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