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□ねごとに返事
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トミーが机に突っ伏して、カンタがソファーで横になっていた。
どちらからも安らかな寝息が規則正しく聞こえている。
カンタの席に座りながら肘をつきトミーを見下ろす。
「部屋で寝ればよかったのに。起きてからが大変だよ。」
体が痛くなっているに違いない。
呟くも、当然反応はなく溜息をつきながら彼の髪に指を通す。サラサラと流れるそれは絡まることなく手から離れた。

「……カンタ…」
掠れた声がやけに耳に響く。
ここで答えたらどうなるのだろうか、少なくとも私は今彼が思い描いている相手ではないのだから、返事をしても良いのではないか。
応えたくなる気持ちを無理やり押さえつける。
トミーが夢の中から帰ってこないだなんてそんなのお断りだ。
きっと、今彼が見ているそれの中に、私はいないのだろうから。

「……早く戻ってきなよ。」
囁いて、再度トミーの髪を撫でる。
なんだか無性に泣きたい気分だった。

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