book

□あーんとしっと
1ページ/2ページ

※ディズニーの続編

「どう?カンタ、間に合いそう?」

パソコンに向かって難しい顔をしながらキーボードを打ち込むカンタを後ろから覗き込み聞いてみる。
「うーん、ごめんモノンノひと段落つくまで話しかけないで」
いつもと変わらない柔らかい声色で呟かれた内容に素直に返事をしてなるべく音をたてないようにお土産袋を漁る。
あったあった。
多分これは二人共好きかなと思って、数種類をいくつか買ってきてしまった。
まあ、無難なのだけれどひとくちサイズのチョコレートだ。
ホワイトにストロベリー、ミルクと様々な味がありほかの人へのお土産も買うもんだから入場料より何倍も高くなってしまった。
まあ、喜んでくれるだろうから良しとしよう。

「トミーチョコ食べる?」
「おー。貰うわ」
カンタの横の定位置で漫画を繰りながら手を差し出す彼に首を降る。

「いいよ、口開けて。入れたげる」
「イヤ。何がいいんだよ。自分で食えんだから手渡しでいいわ」
「ふたりともちょっと黙って」
カンタにピシャリと言われ二人同時に謝る。
「お前のせいで怒られたろ」
「じゃあ口開けてよ」
ひそひそと言い合うも全く折れる気配のないモノンノに仕方なく口を開ける。
ニコニコしながら
「はい、あーん」と言いチョコの包み紙を外して口内に転がされた。
子供扱いされているようで気恥ずかしく素早くマンガを持ち直して捲る。
チョコレートが一層甘く感じるだなんて本当に女子高生のようなことを考えてしまい気を紛らわせるためにそれを噛み砕き飲み込む。
ちらりとモノンノを見ると今度はカンタに向かって開口を求めていて何故か苛立つ。

「カンタ、チョコレート好きだったよねあげるよ。口開けて」
「んー、ありがと」
素直に口を開くカンタがチョコレートを食べようとした時、何故か背後から手首を掴まれ体をぐるりとそちらに向かせられる。
「と、トミー?」
「……」
あれ、怒ってるのかな…。
ひどいしかめっ面だ。
眉間に手を伸ばし、よったシワを小突くと片手首がさらに引き寄せられた。手に持つチョコレートを第一関節ごと食まれ肩がはねる。
「余所見してんじゃねーよ」
手を離され、宛もなくさまよわせながら私はつぶやく。
「しっ、と……?」
彼がふっと視線を外した。

「うるさい」
ライオンのような長めの髪が俯いた彼の目を隠し、ドキリとする。
「……、」
思いつくまま彼にもたれかかる。
トミーも特に何も言わない。
彼の腕をとって抱きしめながら私はつぶやく。
「カンタのことも、モジヤンのことも好きだよ。でもね」
今まで何回も好き好き言っていたのに、なんだか初めて告白する心地で私は口を開く。
「トミーは特別大好きなの。ウワキなんてしないよ」
「……」
未だ俯く彼に聞いてみる。
「チョコレートまだあるけど。食べる?」
「もういい」
「はーい」
チョコレートの包み紙を丸める私の頭に大きな手が乗せられ左右に髪をかき乱し、私はそれを頬を緩めながら受け入れた。

おまけ→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ