ブリーチ長編夢


□追憶の中で
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3.



貴方の居ない世界は余りに今までと違って見えて、私は呼吸すらまともに出来ない。
今にも足場を無くして溺れてしまいそうな恐怖に耐えつつ、まあそれも良いかな、なんて思う。

だから、藍染に話そうって、ずっと考えていた。


「…これは、何だい?」


私の依願書を受け取った藍染は、眉を顰めた。
だけど私は気にせずに、事の次第を説明する。


「私を席官の地位から外してください。現世にでも何処にでも行って、ただ戦いに身を投じたいのです」

「…戦いを好むタイプでもないだろう? そんな自殺紛いな願望のために優秀な副官を失うわけにはいかない」

「そう仰ると思いました。なら、異動させてください。ただ、純粋に戦えるところへ」

「君の言っていることは、ただの自暴自棄ではないのかい?」

「…」


藍染の聡明な双眸が、私を真正面から写す。
おそらく、藍染の言う通りだ。
私は生きるつもりで戦いを望んではいない。

真子を失なって、生きる目的も失なって、自らの頭を掻き毟りたいほどの孤独と焦燥を持て甘している。
何かに没頭しなければ、私は自らの斬魄刀で首を掻き切ることになるだろう。


「…お願いします」


頭を深々と下げた私を、藍染は暫く無言で眺めていたが。
ふと小さな溜め息を吐いて、口を開いた。


「ここ数ヶ月、僕は君の状態を余り分からず働かせ過ぎたかもしれない。平子隊長を亡くして辛くないはずはなかったのに、君は一日も休まず働いてくれた。僕は、そんな君に甘えていた…」

「それは、」

「少し休暇を取るんだ。さっきの話は、それから考えよう。いいね?」

「…」


珍しく有無を言わせない強い口調で言った藍染に、私は反論出来ずに俯いた。

次第に目の奥が熱くなる。
職場で泣くなんて、らしくない。
堪えろ、そう自分に言い聞かせても逆効果で、涙は大粒の滴となって頬を流れた。


「…瀬名くん」

「お願いします…、仕事にでも集中しなければ、真子のことを考えてしまう…、私、もう限界で…」

「…そうか、」


藍染は私の背中に手を回すと、優しく引き寄せる。
温かな胸に顔を埋める形になり、私は驚きに目を見開いた。


「泣くと良い。彼を忘れるまで…」

「…、っ」


私は藍染の穏やかな声と掌に酷く安堵を覚え、自分の中で張り詰めていた何かが切れるような感覚に涙が溢れて止まらなかった。





愛のは裂けるような



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