ブリーチ長編夢


□追憶の中で
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2.



「ずっと前から好きだった。付き合って欲しい」

「…ごめんなさい、まだそういう気持ちにはならないの」


ここ数週間、言い寄ってくる隊員が急に増えた。

真子と一緒にいた頃は、こんなことなかったのに…
毎日のように繰り返されるお決まりに辟易しつつ、私は視線を俯けた。

真子が居なくなって一ヶ月、まだ誰かと付き合う気にはなれない。

私は身を翻すと、隊舎へ向かって歩いていく。
ふと気づいた気配に足を止め、私は溜め息を一つ落とした。


「盗み聞きは悪趣味ですよ、藍染副隊長」


建物の影に佇む、白い羽織を着た見知った姿に、私は思わず眉根を寄せる。
眼鏡の奥の穏やかな双眸が、私を捉えて微笑んだ。


「悪いね、たまたま通りかかっただけだよ。それに…」

「…」

「君はいつになったら僕を隊長として認めてくれるのかな?」

「…え、」


指摘され、私は初めて自分の失言に気付いた。

真子が五番隊から居なくなり、副隊長だった藍染が隊長に昇格するのは至極当然な流れであった。
私は真子のものであった羽織を他の者が着るのを、複雑な想いで眺めながらも納得したつもりだった。


「…失礼しました、藍染隊長」

「いいよ、別に。君の中では、まだ彼が隊長なんだね」

「…、」

「妬けるね」


藍染にしては珍しい台詞に、私は一瞬目を見開いて見た。
しかし、既に藍染は歩き出しており、その表情を窺い知ることは出来ない。

私は自らの左腕の腕章を握り締める。
それは五番隊の副隊長の証であり、真子、藍染に次ぐ三席であった私が引き継ぐのも、また自然な流れであったのかもしれない。


「瞳子」


もう聞くことはない、彼の声がした気がして、私は振り返る。
脳裏に焼き付いたまま離れないあの笑顔は、この瀞霊廷の何処にもないのだと、思った瞬間目の奥がツンと熱くなった。





あの日、くしたものは戻らない



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