青空

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今日もドクターヘリは患者の元へ飛んでいる。
三井先生の指示の元、私達は受け入れ態勢を整えていた。

緋「樋口さんモニタリング問題ありませんでした」

三「何? 一晩中見てたの?」

緋「えぇ、気になって」

そんな会話が聞こえてきた。
寝不足で治療に当たってミスがあったら、こっちもたまったもんじゃない。

三「残念ね、急変しなくて。
待ってたんでしょ? オペになるかもしれないから。……寝ないと体持たないよ」

緋「大丈夫です。私救急車搬送と胎児心拍の論文の時は丸3日寝ませんでしたから」

寝なくてもできます自慢。
それって誇れることなのだろうか。

三「胎児心拍?
あなたあの論文やったの!?」

胎児心拍の論文、たしかに私も参考にすることはあったが、それを彼女一人がやったのか……。

緋「はい。
まぁ、そういうヘリ要請なら対応できると思います」

三「すごいじゃない。よく参考にしてるよ、あれ」

緋「本当ですか!」

ぱあっと表情が明るくなる緋山さん。
まあ、褒められれば誰でも嬉しいだろうね。
その時、救命の非常コードが館内スピーカーで鳴り響いた。

黒「佐伯、来い!」

「わかりました!」

黒田医師について現場である歯科のお手洗いに向かう。
そこには、西口八重というお婆さんが心肺停止状態で倒れていた。

黒「バイタルチェック!」

「はい! すみません、AEDお願いします!」

冴「はい!」

黒田医師が心臓マッサージを始め、私はバイタルチェック、冴島さんにAEDを頼んだ。
このお婆さん、若しかすると、昨夜救命に来てた……?

「代わります」

黒「あぁ」

心臓マッサージをしながら顔を見ると確信が持てた。

「黒、田医師」

黒「どうした」

「このお婆さん、昨夜、救命に、来てます」

黒「……何?」

黒田医師の顔がみるみる曇っていく。

「帰っていく、所を、私、見ました」

黒「……」

冴「AED持ってきました!」

2,3度電気ショックを与えると心拍は戻った。

黒「ウチに運ぶぞ」

冴「はい」

「はい」

冴島さんと返事をして救命に運ぶ。
心拍が戻ったとはいえ老体にはかなりの負担がかかっていたはずだ。
意識が戻るかすら怪しいかもしれない。
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