アスター

□首縊島へ
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玄海さんの修行を終え妖気を抑えることが出来るようになった私はコエンマさんの条件を無事クリアする事ができた。



そして今から暗黒武術会開催の地である首縊島に向かう





……はずだった。






「ぼたんさん、どこに行ってしまったんでしょうか……」

「アイツはほんっとうに……」

私とコエンマさんはまだ船着場でまだ見えぬぼたんさんを待っていた。

「昨日から連絡もよこさんで何をしてるんだ!! 」

「まぁまぁ……それにしてもコエンマさん、その格好は……」

霊界から人間界へ降りるとコエンマさんは姿はおしゃぶりをつけた小さい子供の姿からスラリと背が高い大人の姿へと変貌していた。

「流石にあの姿のままとはいかんだろう?人間界ではこの姿で通っておる。どうだ、カッコイイだろ? 」

「は、はい……とっても……」

おしゃぶりが無ければ、という言葉は飲み込んでおいた。



「……おーーい!」

そんな会話をしていると遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきて目を向けると、待ちに待ったぼたんさん……とその後ろに2人の女性がついてくるではないか



「…………ぼたん、これはどういう事だ?」

「す、すみましぇ〜ん!!」


着くなりコエンマさんに怒られるぼたんさんを横目に2人の女性を見れば、ひとりはこの間私の髪を整えてくれた桑原くんのお姉さんの静流さんにもう1人は目のクリクリとしたとても可愛らしい女の子。

「よ!僉子ちゃん久しぶり」

「静流さん!お久しぶりです。この前は突然お邪魔してしまってすみませんでした…」

「なぁにいいのよ!あんな伸ばしっぱなしよりこっちの方が可愛いじゃない。やっぱり短くして正解だったね」

静流さんとは2週間前、修行を終えた私を迎えに来てくれたぼたんさんが玄海さんに切られた前髪を見て、興奮気味に桑原家へ私を強制連行した時に知り合った。その時にはもう桑原くんは家にいなかったみたいで会えなかったけど、桑原くんには失礼だけど2人に血の繋がりがあるとは思えないくらいの美人だ。


静流さんに短く切ってもらった髪を実はとても気に入っていたから、可愛いという言葉に少し照れてしまう。

するともう1人の女の子がおずおずと声を上げた

「あの私、雪村螢子です。貴方も幽助の知り合いなんですか?」

「は、初めまして!笠原僉子です…私は知り合いというか幽助くん達に助けてもらったんです」

顔や雰囲気の通り可愛らしい声の螢子ちゃんは心配気に瞳を潤ませている

「螢子ちゃんはね、幽助くんの幼馴染なんだよ。あれ?ヨメさんだっけ?」

「し、静流さん!そんなんじゃないったら!ただの腐れ縁よ!!」

静流さんがニヤニヤしながらからかうとそれに顔を真っ赤にして反論する螢子ちゃんは女の私から見てもとっても可愛く思えた。


「でも、ふたりともどうしてここに?」

会話の合間に理由を聞けば一転、表情を険しくするふたりに思わず後ずさる

「和の奴が何日も連絡もよこさず居なくなったもんだから何か知ってるんじゃないかと思って問い詰めたらこの大会に人間界代表で出るって言うだろ?そんなの行くしかないじゃない?」

「幽助もしばらく全然連絡つかなくて、心配してたんですけど会ったら1発ぶん殴ってやろうって思って!ぼたんさんに頼んで連れてきてもらったんです! 」


「は、はは…2人共すごい肝の据わってますね…」

妖怪の巣窟へ行くのに全然怖じ気立つことなく、会いに行くって選択肢しかない2人を見て「凄い」という言葉しか浮かんでこなかった……

その後予定よりすこし遅れて私達は船に乗り首縊島へ向かった。









船に揺られながらまだ見えない島を見つめる。

ついに行くんだ、この大会はとても非情なもの。生きるか死ぬかの世界だってコエンマさんは言っていた。それを目の当たりにして平気でいられるか。足でまといになってしまわないか、本当に役にたてるのか……

幽助くん達のことや自分のこと、これからのこと……様々な不安が頭をよぎる。怖くないと言えば嘘になる、でも自分で決めたんだ。


息を大きく吸って不安を外へ出すように息を吐き出す。


すると後ろから声をかけらた。
振り向いたらそこにはコエンマさんにこってり怒られてヘロヘロになったぼたんさんと螢子ちゃんがいた。

「うぇ〜ん!僉子ちゃ〜ん!」

がばっと私に抱きついて泣き真似をするぼたんさんに対して螢子ちゃんは苦笑いを浮かべながらも少しソワソワした様子だ

「…あの、僉子さん、さっき幽助に助けられたって言ってましたよね?

それで…」


「あ…」

知り合った経緯を聞かれるのだと思うと身体が自然に力が入る。いくら自分自身の罪を受け入れていても何度思い出しても全然気分のいいものじゃない。ましてや人に罪を告白することはとても怖い

私が身構えるのを抱きついていたぼたんさんも気づいたらしく身体を離して心配そうに見つめてくる




「その……幽助の事、どう思ってますか…」








「え、」


「ん?」



「……?」




予想してなかったあさっての質問に私とぼたんさんは一瞬固まる。

螢子ちゃんはその様子を見て頬を染めながら「別にそういう意味じゃなくて!僉子さん可愛いから…あの」と慌てだしている

数秒間を置いてぼたんさんが先に吹き出した。

「ぷっ! あっはっはっは!!

け、螢子ちゃん心配なさんな!あんたの幽助を誰も取ろうだなんて思わないよっ 」

「ぷっふふ……幽助くんには感謝してるけど、そういう気持ちは無いよ」

お腹を抱えて笑うぼたんさんに続いて私も吹き出してしまって声を抑える

「ちょ、ふたりとも笑い過ぎ!!」

耳まで真っ赤にした螢子ちゃんが少し可哀想だったけど、余りにもその小さいヤキモチが可愛くてしばらくぼたんさん共々笑いあっていた









1時間後、島についた私達は用意された車に乗ってあっという間にホテルへ着いた。

「こりゃまた立派な……」

「本当にタダで泊まって大丈夫なんですかね?」

崖を切り崩した所に建てられたホテルは都会の高級ホテルに引けを取らないくらい立派なもので、中に入って周りを見渡せば妖怪や着飾った人間など様々で異様な光景に思わず息を呑んだ


「ここのどっかに幽助が来てるのね」

「螢子ちゃん、お手柔らかにね」

「ぼたんさん甘い!前にあいつのせいで死にかけたんですよふたりとも!」

この異様な光景には目もくれない螢子ちゃんの剣幕にぼたんさんもたじたじになった所でとりあえず部屋に行こうと促し、その場を丸く収めた。

「……幽助くん、本当に殴られますねこれは」

「ま、これもひとつの愛ってヤツだよ」

静流さんと言葉を交わしてその日は幕を閉じた
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