アスター

□霊界へ
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私はいま、ぼたんさんに連れられ霊界に来ている。

初めて来た場所なのにどこか懐かしさを感じる空気に戸惑い胸がざわつく

建物の中を彼女に案内されるまま後ろをついていくと、ひときわ大きな扉の前でぴたっとその足を止めた。

「ここだよ」

「……はい」

ぼたんです!入りまーす! と軽い調子で断りを入れると扉は自動で開き、正面には先程画面越しに話した相手。コエンマが身体に似合わない大きな椅子に腰掛けていた


「……よく来た。先程はスマンな、何せこちらも忙しくてな」

「いえ…私の方こそ、すみませんでした…」

頭を下げようとするとコエンマさんはそう改まらんでもいいと手をひらひらさせたので、私も下げる途中で止まった頭を持ち上げる



「笠原僉子。お前のこれからの処遇について話そう」

「処遇って……コエンマ様さっきこの子を保護するって仰ったじゃないですか! 」

「それには変わりない。だが、さっきも言った通りお前の力を利用したい奴らは山ほどいる。妖怪でも……人間でもな」


最後の部分に妙な含みを感じて、背中に嫌な汗が流れた



「人間でも…って……どういう事ですか? 」

「……影で暗躍する金持ちや実力者の中には妖怪を闇ルートを使って売買もいる。商品となった妖怪は買主の奴隷にされるか、はたまた玩具にされるか……最悪、虐殺を楽しむイカれた奴らも多いのが実状だ……」

「そんな……」


漠然とした嫌悪感が胸に広がっていく

「これは霊界で確認できている案件の一部だ」と彼の後ろにあるモニターに映し出されたのは信じ難い映像

身動きの取れない妖怪をおぞましい表情でなぶり殺している人間の姿。

その映像はすぐに消されたがあまりの惨状に一瞬で目に焼き付いて決して離れない。こんなことを、これが一部というなら他には汚れていて非道なものが……

考えると頭が酷く痛んだ。


「……先日まさにその状況に置かれた妖怪の少女を幽助達が救出している。それも踏まえて 既に今回の事件で勘づいた奴もおるかもしれん。そんな状況でお前を普通の生活に戻すのは危険過ぎる……暫くお前の身柄は霊界で管理させて貰うぞ」

「…………」

ぼたんさんが心配気に私を見つめているのがわかったけど、それに応える余裕すら無いほどコエンマさんの言葉がショックだった。



(だってそんなの……)

(あれが人間のすることなの?あんな酷いことを……
これじゃあ人間の方が、よっぽど……)







その後私は一言も発することなく 用意された部屋へ案内された。

白を基調とした簡素な部屋の作りで、ベッドとクローゼット、そして私が暇をしないようにか本が置かれている。



ずっと部屋の前に立ってるわけにもいかずベッドの端に腰掛ける

「っ! ……?」

着いた手に感じた痛みに目を向けると手の包帯が少しズレて傷口が擦れてしまっていた

巻きなおそうと包帯に手を伸ばすとポタポタ雫が落ちてきて包帯に透明なシミを作っていく


(怖い……)



雫の正体は私の涙で、自分の中にいろんな想いが湧いてきてどうすればいいのかわからなくなる



強くなりたいと思ったのに、反面ではまだ全てを無かったことにして逃げてしまいたい自分がいる



言葉にできない恐怖に大声をあげて思いっきり泣きたい。



どんなに言いくるめてもとても許すことなんてできなくて、自分を消してしまいたい。


悲しみも怒りも戸惑いも…全てがごっちゃになって訳もわからずベットに突っ伏してただただ涙を流した
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