アスター

□強くなりたい
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甘い匂いがする……なんだろ、花……?


微睡みの中すぐ近くで香る匂いにつられて目を開けると、そこにはキレイな女の人がドアップで写る。

「あ。起きた! 」

「!?、っ!!! 」

吃驚して心臓がドクドクいっているが寝起きのせいで声が出ずに口だけがパクパクと開閉している

甘い匂いは彼女のものだったみたいで私が起きたのを確認してニコニコと笑って顔を離した

「驚かせてごめんね、はいお水。」

「あ、ありがとう…ございます」

身体をゆっくり起こして彼女から水をもらって飲み込みと渇きが一瞬にして潤ったのがわかった

私、泣いてそのまま寝ちゃったのか……
先程の醜態を思い出していたたまれなくなる

「あの…ごめんなさい。助けてもらったのに私……」

深く言わずとも言いたい事は伝わったようで私にピシッと掌を向けて話を打ち止めた彼女は優しく微笑んでくれた

「あ、あと……すみませんが あなたは…」

「あれ?自己紹介まだだっけ?あたしは"ぼたん"。
霊界の水先案内人さ!ちなみにさっきの厳つい顔が桑ちゃんこと桑原和真!霊界探偵の幽助の友達……」

言いかけて突然ハッとしたぼたんさんは時計を見て慌てだした

「そうだ時間!もうすぐコエンマ様から連絡が来るんだよ!起きてすぐで悪いけど僉子ちゃんにも関係のある事らしいから、一緒に聞いてもらわなきゃならないんだ」

「え?あの、コエンマ様って……」

「ああ〜細かいことはあと! 今こっちの部屋にみんな呼んでくるから!」


そう言い残しバタバタ部屋を出たぼたんさんにデジャヴを覚える


話があるならベッドに入ったままは流石に失礼かと思い、身体に気を使いながらゆっくりベッドから足を降ろす。
そこでベッドに着いた手の包帯が新しいものに変わっている事に気がついた。


(なんでこんなに……)


昨日会ったばかりで敵だった私にここまでしてくれる彼らの優しさに申し訳なくてとても胸が痛んだ





___少しして部屋に集まった皆を前に、ぼたんさんがトランクのようなものを開いて見せると、そしてそこに映し出されたのはおしゃぶりをした小さい子供だった。

「よう!ワシは閻魔大王の息子、コエンマじゃ。笠原僉子。お前の事は幽助達から聞いている」

見た目とは裏腹にいかにも偉い人!という感じの口調で話すこの人が閻魔大王の息子……
ぼたんさんが耳打ちしてくれたけど、あの見た目で私の50倍近く生きているらしい。

目を丸くしているとコエンマさんから名前を呼ばれて私は姿勢を正した。

「さっそくだが、お前に確認したいことがある。幽助達の話を聞いてまさかとは思ったが…


…お前は癒魔璃(ゆまり)一族の者だな」





「癒魔璃……」
「なんだそりゃ?」
「ひばりのいちぢく?」

桑原くんの酷い聞き間違いにコエンマさんは椅子ごと後ろにひっくり返ってしまった。

「癒・魔・璃だ!バカタレ!!

……癒魔璃一族の者は幼い時から魔界にあるありとあらゆる毒を摂取し、何百世代にも渡ってどんな毒や病にも耐える抗体を子孫に残す種族だと言われている」

「オレも癒魔璃の名前は聞いたことがある。癒魔璃は自身の血を使い他者の傷を癒す事ができるというが……まさか昨日のあれが……」

コエンマさんは蔵馬くんの言葉に頷くと私に再度「そうだな」と確認する。4人も画面のコエンマさんから私へと視線を移している


「……はい。コエンマさんの言う通り、私は癒魔璃です」

頷きながら答えるとコエンマさんは困ったように眉間にシワを寄せため息をついた。

「やはりか……これは困ったことになったぞ」

「困ったことってなんだよ。」

「……幽助達も見ただろう、この娘が力を使うところを。
蔵馬が言った通り。魔界のあらゆる毒や病を受け付けぬ癒魔璃に流れる血は瀕死の傷をも治す程の力を持つと言われ、心臓を喰らえば不老を得られるとも伝えられておる。
その力がある為に癒魔璃は"魔界の秘薬"とも言われておるのだ」

「僉子ちゃん、そんな凄いことできんのかよ!? 」

感心したように息を吐く桑原くんに私は何も返すことができずにいるとコエンマさんはひとつため息をついて眉間に皺を寄せた

「しかしわからん。そんなお前が何故ここに……人間に転生している。」


「……確かに癒魔璃の身体にはどんな毒も病も先祖から代々受け継がれた抗体があるお陰で効果がありません。でも、代わりに闘う力がとても乏しく、なにより自分が負った傷は治すことができないんです」

脳裏にあの妖怪達と男の子がチラつく。
闘う力が無かったせいで……きりのない思いに目を瞑るとぼたんさんが身を乗り出して口を開いた。

「それじゃあ他人のは治せて自分は治せないっていうのかい? 」

「自分に力を使ってもただ妖力が循環するだけで効果が無いんです。

__闘う力を持たない者は魔界では生きていけない……必要な時以外は敵に見つからないよう、妖気を最小限抑えて行動していました」

「なるほど…普段妖気を抑えていれば自分の中に妖気を貯蓄できるし敵からも見つからない。魔界で生きるための知恵ってやつですね」

蔵馬さんは恐らくとても頭がいいのだろう。先程からの物言いといい、少しの言葉で一連の出来事を繋げられるこの人の頭は情報に溢れているんだと思う。
そんなことを心の隅で思いながら話を続けた


「コエンマさんは癒魔璃の血に治癒の力があると言いましたけど、正しくは血と自身の妖力を混ぜ合わせ他者に施すことで初めて成される力なんです。

……それを知らないで私達を襲う者はとても多く、1000年以上続いた一族は……滅びました。」

「!」

「………」




「……私が人間界に来た理由は、ひとつだけ。

___人間に、なりたかったから……」
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