つきかほ
□合宿1日目
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「ち…ちょっと!!!何してるんですか金澤先生……!!!」
「ん?何って、見ての通りだが?」
私は今、昨年度学内コンクールから各パート上位10名ずつ選出されたメンバーで行われている4泊5日の夏休み合宿に来ている。
この施設は豊かな自然に囲まれていて、音楽設備も整っていて
スポーツや乗馬なども楽しめる、なんだかとてもすごいリゾート地。
レクリエーションや
音楽以外でも豊かな経験を積むことを兼ねたこの合宿では過ごし方はそれぞれ自由だが、初日の今日は全員練習室で丸1日練習をすることになっていた。
そして併設の温泉で1日の汗を流してホッと一息ついたところで
女性よりも男性の方が先に温泉から戻ってるだろうからと蓮くんを探しに大広間に来てみたんだけど…
目の前にとんでもない光景が広がっている。
「…香穂子、こっちにおいで」
私を見つけ、彼らしくない、へにゃっとした甘い笑顔で私のことを呼ぶこの青年は天才ヴァイオリニストで。
クールだと噂の月森蓮で。
周りも自分も信じられないけど…実は私の彼氏なんです。
ソファに背を預ける彼の目の前には、半分程空けられたウィスキーのボトルと、空のコップ。