ゆのかほ
□the little prince
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ふと目が覚めると、少し肌寒くて身震いをした。
ぼんやりとした頭で窓を見るとまだ外は薄暗く、恐らく早朝なのだろう。
もうひと眠りしようともぞもぞ動いてると、隣に暖かい感触がして…。
「……起きたか?」
「あ、あずま、さん…?」
左を見ると、そこには同じく寝起きであろう梓馬さんが。
つい先刻まで、とても幸せな夢を見ていた。
梓馬さんに、プロポーズされる夢だ。
あれは、現実だったのか、それとも今隣にいる梓馬さんまでもが夢なのか。
でも、夢にしては温かい肌の感触がリアルで。
必死に寝る前の記憶を辿っていると、夢の中で梓馬さんにもらった指輪が左手の薬指にキラキラと輝いている。
現実なのか夢なのか本当に分からなくなってきた香穂子は、ペタペタと梓馬の肌に触れ、ついでに自分のほっぺたも抓ってみる。
「……おい、夢じゃないからな?」
夢じゃ…ない……?
ようやく覚醒してきた香穂子は、下腹部に鈍痛が走っていることに気付き、自分の体を見て戦慄した。
服は1つも身に纏ってなく、身体中に赤い薔薇が咲いている。
「ひぃっ……!!!」
悲鳴を上げたと同時に恥ずかしさがこみ上げ、すっぽりと布団に包まる。
「“ひぃっ”ってお前…もう少し可愛い反応出来ないわけ?」
「だだだ、だって…!!
起きたら梓馬さんがいて、指輪があって、服着てなくて、お腹が痛くて、それから、」
「あぁ。
当たり前だろ。
プロポーズして、ホテルに着いてから香穂子がぶっ飛ぶまで抱いてたんだから。」
「ぶっ…!
それは今さっきまで夢で……っ!
………あ、あのプロポーズは夢じゃなかったんですか…?」
梓馬さんは “はぁ…” と、呆れたように溜息をついてから真っ直ぐ私を見据えた。
「本当、飽きないな、香穂子は。
いいか?
……指輪、あるだろ。」
「…はい」
「ちゃんと、温かいだろ。」
「……はい」
「ほっぺ抓っても、隣にいるだろ。」
「………はい。」
「………夢になんてされて堪るかよ。
もう、一生離してなんかやらねぇからな。
覚悟しろよ?」
「……っ……はいっ」