ハンター試験編
□近くて遠い心音
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ナマエは高くそびえ立つ、トリックタワーと呼ばれる円柱状の塔の頂上に降り立っていた。
視界にとらえた雲が、かなりの速度で流れていく。遮るものが何もないこのタワーの頂上では、常に強風が吹き付けてくる。
ナマエは、ばさばさとなびく髪を鬱陶しそうにかきあげた。
ネテロがいうには、ここが三次試験会場であり、試験の内容は、ここから72時間以内に地上まで降りることらしい。
ナマエは円形の端によって、遥か遠くの地上を眼下に見た。
下からも横からもビュービューと風が吹きつけてくる。
「なあんだ、ちゃんと地面がみえるじゃない。」
飛び降りようと足に力を込めたところで、腕を引かれた。
「ちょっと、どういう」
言い終わらないうちに抱きかかえられて、ヒソカが足元のタイルを踏むと、バコンっと回転して、そのまま下に落ちた。
「そのまま飛び降りちゃうだなんて、もったいないじゃないか。せっかくだから楽しもうよ」
悪びれもせずこちらを見てククッと笑うヒソカを前に、文句の一つもいう気が失せた。
「とりあえずおろしてくれる?」
「もうかい?残念」
すとんと床におろしてもらった。ナマエは、天井を見上げて溜息をついた。
天井を壊して上に戻ることもできるが、ここまできたら乗り掛かった船だ。
「わかった、先に進もう」
「そうそなくちゃ」
部屋の端には机の上に手錠がおいてあった。ナマエは壁についているボードを読んだ。
「ここは友誼の部屋・・・?」
ナマエは目の前の手錠をみた。嫌な予感がした。
ナマエは恐る恐る先を朗読した。
「君たちは、お互いの片手を手錠でつながれた状態でゴールまでの道のりを乗り越えなければならない」
ナマエは目頭を押さえた。やっぱり一人で飛び降りるべきだった。
「魅力的な課題だね。この手錠でお互いつながれた状態で下にいけばいいのかな」
「その通りだ」
天井のスピーカーから音声がした。
「私はリッポー。刑務所所長兼、この三次試験の試験官を任されている。このルートは、お互いの連携が必要不可欠だ。それでは検討を祈る!」
そこでブツっと音声は途切れた。
「へぇ。ここは刑務所なんだね。楽しそうだ」
「ここに一番捕まえなきゃいけない殺人狂がいるのに、役に立たない刑務所所長ね」
ナマエは憂鬱な顔をして手錠をつけた。もう一方の手錠をヒソカに差し出すと、ヒソカはうっとりとこちらを見ていて、思わず舌打ちした。
ヒソカの細い手首にもカチャリと手錠がはまる。
すると、騒音を出しつつゆっくりとコンクリートの壁が動いて、扉が現れた。
「ねぇナマエ。これでボクたちウンメイ共同体だね」
「いい、ヒソカ。少しでも変なことしたら、あなたの腕ごと消すから」
「それもいいね。その時は二人仲良く失格だね」
もう、早くクリアしてしまおう。
ナマエは今までの試験の中で最も意欲的な気持ちになった。