長編夢

□#5 日
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#5 日

及川たちと別れてからゆめはひとり悶々としていた。

「納得いかない」

手には番号の記されたゼッケン。
選抜合宿参加者全員に先着順で与えられるものだ。

総勢参加者は全部で1500人。
開場30分前にも関わらず、
既に半数以上が集結している。


そしてゆめのナンバーは、613番。

「納得いかなーい!!!」

ビクっとする周りの反応にはお構いなしに
ひとりイライラと唸りを上げる。

「っざけんな!なんで613番なんだよ!こちとら3時間前には来てんだよ!っつーかそしたら必然的に1番だろーがっ!誰だよ1番持ってる奴!マジでしばき倒すぞこの野郎っ!」

、、、。
ゆめは心底ちっさい人間なのであった。

「何見てんだ!あ゛!」

挙げ句の果て威嚇射撃。
関係のない人にまでガンを飛ばす始末。

ほんとに女性とは思えませんね。
女性の皆さんは決して真似してはいけませんよ。

話は戻り、

おらおらモードのゆめの周りには
もちろん人は寄り付かず、
大人の皆さんは関わらないよう上手く交わすのでした。

そして類は共を呼び、

ーードンッ

一組の集団にぶつかる。

「ってーなテメえ!われ!ハゲえ!」
とりあえず見たまんまの通り暴言するゆめ。

「ハゲ、ですと?」
ピクっと青筋を立てる坊主頭。

ガッとゆめの胸ぐらを掴み
これでもかってくらいに顔を近づける。

「ハゲじゃねえ!お洒落坊主じゃボケええッ!!」

ーースパーンッ!!

刹那、
坊主頭から気持ちいぐらいの音が鳴る。

「その顔やめろッ!田中ァッ!」

坊主頭の顔が視界から消え
ゆめの目に前に現れたのは数人の男達。

「すんません、大地さん」
田中と呼ばれたハゲ男。

大地と呼ばれた短髪の黒髪男。

それを見ながら笑っている
銀髪で猫っ毛の男。
前髪一部だけ金髪のツンツン男。

自分が怒られたかのように挙動不審の
見た目はめっちゃ怖そうな男。

怪訝そうに睨みつけるサラツヤ髪の男。

ぽかんとしているオレンジ髪の子供。

ゆめが激突したのはそんな集団だった。

ーー。

「ってかお洒落坊主ってお前」

「ス、スガさんっ
だってコレ!見てくださいよ!サイドにライン入れてんっすよ!?」

「俺はイカしてると思うぜ!龍!」

「そっすよね、、
って爆笑じゃないっすかノヤっさんっ!!」

ーーー。

「、、、で、なんでお前がビビってんの?」

「だって、お前怒ると怖いんだもん」

ーーーー。

「誰だコイツ」

「あ、それオレも気になってた!」

ーーーー。
もしかして、存在無視されてます?

ゆめがひとり寂しそうにしていると、

「あのさっ」

オレンジ髪の子供に話しかけられた。

「キミもバレーするの?」

あっけらかんと聞いてくるので
さっきまでのイラ立ちが何処かへ消えてしまった。

さすがに子供相手にな、、、

「まあね」

「俺よりも小さいのにスゲぇ!
ねえねえ、身長何センチ??」

「っちさ、、、158だけど」
、、、落ちつくんだ相手は無邪気な子供。

「158じゃあ俺よりも小さいなっ」

身長という言葉に反応したノヤっさんと呼ばれた男が割り込んでくる。

「おお、俺は初めて人を見下ろした!!
あの時のお前の気持ちが今ようやくわかったぜ日向!」

カチン。

「こらこら、西谷。
流石に初対面の相手に失礼だろうが、、、」

空気を察したかのように
強面の男が、恐る恐る割り込んできた。

「ポジションは?!」

目をキラキラさせながら無邪気に聞いてくる日向と呼ばれた子供。

イラ立ちをぐっと堪えながら、

「うぃ、ウィングスパイカー」

「おお!オレもオレも!!」
さらにテンションが上がる日向。

そうだよなぁ
小学生ぐらいなら大きいほうだもんな

と和かに見守るゆめ。

「アンタも飛べるのか?」
サラツヤが話しかけてくる。

アンタも、、?
そういえば、あの金髪兄ちゃんにも同じこと言われたような、、、

「飛べる、けど、、」

「やっぱお前と同じだな。お前より小さいからこいつの方が小さな巨人に近いんじゃねえの」
ニヤりとサラツヤが見下したように日向を煽る。

ー小さな巨人
その単語にドキっとした。

そのせいか、ゆめの日向への反応が少し遅れた。

「身長ッ!!
うう、、、ただ、縮むわけには、、、!!」

「、、、ええ?!!」

突如叫び出すゆめに驚く一堂。

「あんた、小学生じゃないの?!!」


その場にいる全員の視線が集まる
ぱちくりと音が鳴ったような気さえする

も、束の間、


「「「だはははははは!!!!」」」

爆笑。


唯一日向だけが不満そうな顔をしている。

「お、オレは小学生じゃねえ!!」
堪らず吠える日向。
茹で上がったタコのように真っ赤になっている。

「お、お前のせいだぞ!!」
少し目をうるうる滲ませながらゆめを指差す。

「勝負しろっ!」

「へ」

「お、オレと勝負しろっ!
それで、どっちがホントの小さな巨人か決める!」


「おい、日向」
サラツヤが物申す。

「勝負ってどうすんだ。
俺はお前に手を貸すつもりはない。なんたってお前の勝負だからな。
お前、俺のトスなしにどうやって勝負すんだ?」

「え」

「俺は勝ちに必要だと思った奴にはトスを上げる。
だから別にお前が小さな巨人だろうが何だろうが俺には関係ない。」

今度はどんどん蒼ざめる日向。

「こ、この合宿で勝負だっ!」

改めて、ビシっと指差す日向。

「この合宿で代表に選ばれた方がホントの小さな巨人なっ!だ、だから、逃げんじゃねーぞ!」
下手くそなガンを飛ばしてみせる。

なんだろう、、、
なんか、こいつ、、、

「かわいいなお前っ!!」

勢いよく日向に飛びつくゆめ。
日向の頭にむぎゅっと抱きつき、わしゃわしゃする。

「うわあああ///な、何すんだよ////」

「お前まじかわいいっ!なんか昔飼ってた犬に似てんだもん」

ひたすらわしゃわしゃするゆめ。
思わず赤面する日向。

うわあああ///
なんか、この人、///
す、すっっごいいい匂いするんだけど////

どうやら男の本能がゆめに反応しているようだ。

こ、この人ホントに///オトコの人なのか////
オレ///オトコの人になんでこんなに///
ドキドキしてんだ////

周りも思わず赤面してしまう程、
ゆめのわしゃわしゃ攻撃は絶大な威力を発していた。

ゆめは
顔だけは、イケメンだ。
中性的な顔立ち故、凛と整った表情だと近寄り難いものがある。

だが、
その表情が途端に笑顔になると、
一気に変わる。

その笑顔は思わず人を魅了する。

ゆめは、その笑顔故に、
中学時代では全校男子から何かしらのアプローチをされたという伝説を持つ。


「ねえ、ちょっと」

わしゃわしゃ攻撃で身動き出来ない中で、

「随分楽しそうだね、チビちゃん」

それは笑顔なのに笑顔ではなくて、

「気にくわないんだけど、さ」

明らかにイラ立ちを放っているイケメン登場。


「「「「お、及川ッ」さんっ」」」

「げっ」

ーー天敵襲来。
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