長編夢
□#14 噛
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#14 噛
泣き噦り、色々ありすぎたせいもあってか、
すっかり眠ってしまったゆめ。
目が醒めると、
辺りはすっかり真っ暗だった。
「っつー、、、」
起き上がろうとするが痛みで思うように動かない。
そうだ、
骨折したんだっけ。
確か、全治3カ月。
これじゃあ結果は目に見えてんな、、、
また仰向けになって
左手を頭の上に動かそうとしたとき
「ん」
何かに阻止された。
あったかい
ふと左側を見ると、
「、、、っふ」
思わず笑みが零れた。
「ずっと一緒に居てくれてたんだ」
そう言って傍らに眠る黒尾を眺める。
すっかり熟睡しているようで、一向に起きる気配はない。
だのに、握りしめた手は硬く、強く、そして優しい。
こんなに大きかったんだな
「ありがとう」
そう呟くと
それが合図かのように
「バカ」
大きな身体から声が聞こえた。
目を丸くしていると
「お礼言ってんじゃねえよ」
ムクッと起き上がり悪態つく。
その頬にはシーツの痕が、暗がりなのにくっきり見えた。
「ぷっ、、あははは!!!」
「な、なんだよっ」
「だって、ほっぺっ!型ついてるんだもん!!」
そいうってケラケラ笑うゆめ。
そんなゆめを、優しく、優しく、包み込む。
「っ//テ、テッちゃん?///」
「悪りぃ、」
ちょっとこのままでいさせて
そう云って抱きしめる腕に力が篭る。
「い、痛いよ、、」
「、、、」
「テッちゃん?」
震えていた。
こんなにも大きくて、力強い、背中が、
頼りなく震えていた。
「怖かった」
ボソっと呟く。
余りにも微かで一瞬耳を疑った。
だけど、ハッキリと聞こえた。
「テッちゃんのせいじゃない」
そういって硬めの髪を優しく撫でる。
それでも不安そうにゆめを抱きしめ続ける黒尾の髪をかきあげるように、何度も、何度も、撫でる。
耳に手が触れ、
ブルッと黒尾の身体が震えた。
「耳、弱いの?」
まさかと問いかけ、覗き込んだ黒尾の顔が
少しだけ赤く染まっていた。
ウズっとして、
ダメダメと思いつつも、
「ふーっ」
と息を吹きかけてみる。
バッとゆめから離れ、
耳を抑えて真っ赤になる黒尾。
その余りの面白さに笑い出す。
「あっはははッ!!」
「っ//」
「何その顔っ!」
そういって尚も笑い続けるゆめ、
に、
「ッ//」
猫が反撃。
「っちょ///んっ//」
顎をその大きな手で固定され、
耳を舐められる。
堪らず目をぎゅっと瞑る。
「ゆめも弱いだろ、ここ」
そういって、耳を甘噛みされる。
「っ//ふ、ふぁ//」
耳垂から耳介を蔦って生温かい感触と
「っふ//んっ、、ん///」
わざと鳴らす水音。
すかさず、耳介を甘噛みされる。
そしてそのまま奥へ、
「あっ//んっ//」
思わず出る声を必死に抑える。
だが、それだけに留まらず、
まるで獲物に噛み付くように首筋へ
「んっ//っは//」
チクっと少しの痛みで
吐息が漏れる。
「仕返し♪」
下をペロリと出し、得意げにゆめを見つめる。
「テ、鉄朗ーっ//」
顔を真っ赤にして左手で黒尾の胸元をガシガシ叩く。
そんなゆめを見て声を出して笑う黒尾。
だけどすぐ、ゆめの腕を掴んで、
少しだけ真剣な顔を向ける。
「俺が責任とるから」
だから、
「俺の嫁にこい」
そういって、あの時のように
屈託ない笑顔でニカっと笑ってみせた。