長編夢

□#15 仮
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#15 仮


「あー、えーっと、お断りします」

黒尾の渾身のプロポーズも虚しく、


「へ」

ゆめの心ないひと言により崩れさった。


「責任も何も、テッちゃんのせいじゃないし」
ヘラッと笑い、

「ったく、相変わらず心配性だな」
言葉を失い固まる黒尾の背中をバシバシ叩く。

敢えて助言しておくが、
ゆめには全くの悪気はない。


「あの時見たいにヤワじゃないってね」
そういってニカっと笑いVサインする。

そんな分からず屋の天然女に堪らずイラッと、
右腕を強引に掴んでみせる黒尾。

「いだだだだ」

「どこが、ヤワじゃないって?」

「ごめんごめんいだだだ!わあったから離して!」

「ったく」

どっと疲れた。
そんな気がした黒尾だった。

「いいから今日はもう寝ろっ」
立ち上がり、強引にゆめの額をベットへ眠らせる。

「な、なにすんだよっ」

なにすんだよじゃねーよ
そう心の中で悪態つき、

「明日、」

「?」

「結果出るぜ」

そう告げると、

「あ、、うん」

俯き、自信なさげな幼馴染。

ーーパンッ

頬を包み込むように軽く叩く。

「やってみなきゃわかんねえ、だっけ?」

目を丸くして黒尾を見つめる。

「お前がそんな顔すんな」
分かったな、
そういってゆめの頭を軽くポンポンと叩くと

「うん」
ニコッとして黒尾を見上げる。
そんなゆめに背中を向け、

「テッちゃん、おやすみ」

「お、う、、」

救護室を後にした。


暫くして思う、

「っー//」

無自覚にも程があんだろ///

「反則だっつーの///」

そう呟いて、1人静かな廊下へと紛れていった。



ーーピピッ、、ピッ

鳥の囀りが煩い。

「ん」

眩しい、、


「朝か」

運命の日が、やってきた。



ーーコンコンッ

「おはよう。調子はどう?」
扉が開いて、潔子が入ってきた。

本当に似てるよな、、、

「お陰様で大分」
そういって笑ってみせるが、

ーーガシッ

「ってえ!」

いきなり腕を掴まれた。

「嘘」
そういって真顔で、無表情で、

「昨日の今日でそんなに良くなるわけない」
言い放つ。

ある意味、
香よりも怖い、、、

「ま、結果は目に見えてんだけどね」
そういって苦笑する。

「全治3カ月じゃ、論外だもんな、、。」
言葉にすると痛みが倍増するみたいで、
胸がギュッと締め付けられる気がした。

「その事で話があるわ」
そういって徐ろに立ち上がり、扉を開ける。

「え」

「よっ調子はどーだ」

そこに居たのは、

「烏養さん、なんで」

「ようやく名前覚えたな」
そういってニカっとする烏養だった。


「お前に結果を伝えに来た」

「あー、うん」


ききたくない


「お前は、」

ききたくない


「合格だ」

「へ」

目を丸くする。
幻聴、じゃなかろうか

そう思い、烏養の顔を見る。

「だが」

だ、だが、、?

「(仮)、だ」

「かっこかり?」

そのまま繰り返したら
何故かすごく片言になってしまった。

「つまり、様子見ってことだ」

良かったな
そういってゆめの頭を雑に掻き回す。


「とりあえず、完治するまでは私と一緒にマネージャーとして、選手のサポートをしてもらう形になるわ」

いまだ混乱しているゆめに潔子が告げた。

「だから、よろしくね。」
そういって左手を差し出す。

その差し出された左手を見て、
途端に理解する。

そして、

「あ、ありがとうございますっ!!」
これでもかってぐらい大きな声で感謝した。

やった!
やったよ!
これでまだバレーが出来るっ
お兄ちゃんっ!まだ、繋がってるよ!

嬉しさを噛み締め、
その思いを差し出された左手に込めるように
ゆめは硬い握手を交わした。

「ってことで、明日から動いてもらうわね」
そういってニコッと潔子が笑う。

へ?

「明日っ!!」

わわわたし、
昨日の今日で重症なんですけど、、、

「よろしくね」
有無を言わせぬ圧力に負け、

「はい」
地獄の合宿が始まったのでした。
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