長編夢

□#12 折
1ページ/1ページ

#12 折

「手加減はしないから、安心しな」
ビシっと指さす及川の顔は不敵な笑みを浮かべている

徹が、敵、、、
思ってもみなかった。

『キミは俺が引き出してあげるよ』

そう言った徹が、まさか、、、

不安に覆われるゆめに
ポンっと頭に重みが伝わる。

「の割には余裕なざげじゃん、及川」

にやりと笑って見せる黒尾だ。

「相棒とられて妬いてんの?」

「ッこんのクソ猫ッ」

「光栄です♪」

ばちばちと目から光線が出ているような光景に、
ーースパーンッ
と気持ちのいい破裂音。

「クソ及川ッ!何時までもガン飛ばしてんじゃねえ!」

「い、岩ちゃん、、」
流石の及川も少し涙目になる。

「だがな、もちろん負けねえ!!」
そういってビシっと指差す。


ーーーピーッ!!


「それじゃあ試合始めんぞッ!
それぞれエンドラインに並べッ!!」

「「ッシャーッス!!」」

「先に10点先取したほうが勝ちだ!
それでは試合開始っ!」

ーーピッ
勢いよく笛が響いた。


はじめは及川からのサーブだ。

「いくよ、レン!」
そういって思い切り踏み込み、
ボールを高く放った。

あわせて高く真上へとび

落下と同時に

ーードゴッ
ボールとは思えない音がなった。

「!!」
気づいた時には

ーーピッ
烏養が相手コートの先取を示していた。


「先ず、一点」

ふーっと長めの息を吐くゆめ。

やっぱり凄い人だ。


「おうおう、やっぱとんでもねえサーブだな」
相変わらず余裕の笑みの黒尾が楽しげに云う。

そうこうしている内に2本目の笛が鳴る。
ーーピッ!

ブンっと風を切る音と
ーードゴッ
とやはりボールとは思えない音が鳴る。

サイドラインギリギリを目掛けてボールが着地する瞬間、

ーーバンッ
叩かれたような音がなって
ボールが高く宙へあがった。

「ッ」
ゆめがボールをレシーブした。

「よくやった、レン」
そういってすかさずボールをトスする

かと思われたが、

「「!!」」

ーーピッ
ボールは及川たちのコートへ落ちていた。


「意外と器用なんだよ、俺♪」


続いて黒尾のジャンピングサーブ。
勢いは申し分ないが及川には少し劣る。

だが、コースがいい。

「ックソ」
レシーブを崩された及川が苛立ちの声を漏らす。

「岩ちゃん!」
ネットに近いところでレシーブがあがる。

「わあってるっ!」

ーーバシッ
タイミング良く岩泉がスパイクを打ち込む。

が、

ーーバンッ

「あったりー♪」

黒尾のブロックに阻止された。


尚も攻防は続くが、
黒尾とゆめに分がある状況となった。

ーーピッ
そしてついに、9点目の笛。
マッチポイントだ。

9ー7

あとのない及川だが、
ここで自身のサーブがやってくる。


この場面何度も経験してきた

今度も、

勝つのは、俺だ!!

ガッと目を見開き、
得意のジャンピングサーブを放つ

「ハアアッ!!!」
渾身の力で打ち込む。

球はまるで弾丸のように
エンドラインギリギリを目掛けて飛んでいく


「「!!」」

反射的に2人が球を追った。

そう、
反射的に、

反射が良すぎたのだ。


「あぶねえッ!!」
烏養の叫ぶ声。

同時に

ーーゴゴッ!!
耳を疑うような音がなる。

一瞬静まり返るコートだが、
すぐにどよめきが湧いた。


「オイ!オイ!しっかりしろ!!」

っうう

ゆめが目を開けると
黒尾が必死に声をかけていた。


「大丈夫かっ!意識はあるかっ!!」

「はは」
、、なんだ、コイツでもこんな焦った顔すんじゃん

「バカっ!何笑ってやがる!」

ダメだ、
意識が朦朧として、
身体が、

目が、

「オイ!、、オ、イ、、、、!、、、!」

そしてゆめはまた意識を失った。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ