長編夢

□#11 猫
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#11 猫

「よろしくな」

「よ、よろしく、、、」

なぜ、わたしはこんなにも不運なんだろう、、、

目の前にいるには、
黒髪を逆立て、ニコともニヤともとれる嫌らしい笑顔の男。

「どーしたの?釣れないねえ」

黒尾鉄朗であった。

「いえ、別に、、」
極力目を合わせないように努めるゆめ。
そんなゆめを満足そうに見つめる。

「そんなに緊張しなくてもイイじゃん、レンくん」
含みのある言い方で名前を呼ぶ。
明らかにわざとだ。

ああ、
なんでこいつとペアを組まなきゃならんのだ、、、


事の経緯を説明しよう。

第2体育館に集められた50人は、
最終審査を受けることとなった。

最終審査の内容は

「2on2の試合をしてもらう!」

であった。

この試合で個人の実力や協調性などの総合力を審査するらしい。

ペアは、運も実力のうちと、番号の記された紙をひく所謂くじ引きで決まった。

そしてゆめの運命の相手となったのが、

黒尾鉄朗であった。


「お互い全力で頑張ろう」
お得意の優しげなうっさん臭い笑顔を向け、
ゆめの前に手を差し伸べる黒尾。

「馴れ合う気はない」
それに対し、警戒心丸出しで強気に言い放つ。

もう騙されて堪るかっ
一歩後ろへ下り、まるで犬が威嚇するかのように黒尾を睨みつけるゆめ。


実はこの2人には秘密がある。

第1審査終了後に、

「キミ、ーー」

耳元で囁かれた、

「っ//」

2人にしか知らない秘密が、、、

それが故、ゆめは、気が気でないのだ。


そんなゆめを見て、

「大丈夫。レンの秘密は俺が守るよ」
肩に軽く手を乗せ、黒尾はニコっとしてみせた。

「っ//」
すぐさまバッと黒尾の手を振り払う。

と、

「あっれえ!黒尾じゃん!」
そこに現れたのは、


「ぼ、木兎さん!!」

1羽の梟。


あんたはほんっとにヒーローだよっ
と心の中で泣いて絶賛するゆめであった。


「おお!レンも一緒かっ!奇遇だな」

「は、はい!その節はどうも」

「木兎じゃん。よく審査受かったな」

「カチーンっ!
それはそれはどういう事かな黒尾くーん」

「そのまんまの意味だがはは」

「相変わらずムカつく奴だなお前はよお」

そんな黒尾の言葉を間に受け木兎は黒尾の肩を組み、
青筋を立てながら悪態つく。
それをただ平然にニヤニヤし続ける黒尾。
それが彼等流の挨拶のようだ。


「やめなよ、クロ」

まるで急に現れたかのように
プリン頭の男が口を開いた。

「よっ久しぶり、研磨」
そう呼んで、ニヤニヤしながら研磨の肩に腕を組む黒尾。

「さっきまで一緒だったじゃん」
少し重そうにしながらも無表情に呟く。

「なるほどなぁ、お前のペアが木兎ってわけか」
面倒くせえな、と
口にする程そうは見えない黒尾。

「ははん、相棒を取られてさぞ悔しかろ」
腕を組み口の端をあげ何故か自慢気の木兎。


またですか、
とここでゆめが軽く溜息をついた。

また忘れられてるよ
ま、仕方ないな、知り合いいないし、、


「ま、そいつは背骨で脳で心臓だからな。チームの」

「クロ、その言い方やめて」

「だが、」

にやりとして黒尾がゆめの肩をグイっと引っ張る。

「!?」

「悪いが俺にはこいつがいる。負ける気はしない」

「え」

ええええ??!!

そしてまた話の中心に巻き込まれるゆめ。
黒尾の嫌らしい笑みが覗き込む。

「おお!お前そんなに強いのかっ?!レン!」

「ふぇっ?!!そ、そn」

「おうおう!強い強い!最強だ♪」

ぐっ
こ、このやろおっ
黒尾を睨みつけ拳を振り上げようと努めるが、
簡単に阻止され動けない。

「ふーん、クロがそんな風に言うの珍しいね」
そんなゆめに興味津々な研磨が観察するように見つめる。

「レン、だっけ」
ちょっと含みのある呼び方。

「う、うん」
そんな研磨に内心ビビりまくるゆめ。

バレマセンヨウニ
バレマセンヨウニ


「オレは研磨。よろしく」
そんなゆめとは裏腹にケロッと平然と自己紹介し、
研磨はゆめから目をそらした。


「よ、よろしく」

呆気にとられるも
ば、ばれてないっ?!
よ、良かったぁー、、、

とゆめは安堵した。

「よかったな」
そんなゆめをみてニヤニヤとする黒尾。

「っ//お、お前のせいだろっがっ!!!」
全力で殴りかかろうとするも
やっぱり身動きできないゆめであった。

そうこうしている間に、


『613番、960番のペアの方は第1コートへ来てください』

試合開始のアナウンスが響く。


「俺らだな」
そういってゆめを解放し、背中を向けコートへと向かう黒尾。
慌ててその背中をゆめが追う。

「じゃあ、頑張ってクロ、レン」

「俺と戦うまで負けんなよ、黒尾!レン!」

そんな黒尾とゆめの背中に賞賛を送る研磨と木兎。


「♪」
振り向かず、右手だけあげヒラヒラさせる。

「あ、ありがとう」
少し恥ずかし気にお礼を告げると軽くニコっと笑みが返ってきた。

ついに始まる
兄ちゃん、あともう少しだよっ!


ーーー第1コート。

「おっ!やっぱお前残ってたな」

コートに立って早々、審判らしき人物に話しかけられるゆめ。

ハッと顔をあげると、

「あ!あの時の?!」

「だーかーらー、烏養繋心って言ってんだろうがっ」
悪態つくも、ニカっとしてみせる烏養であった。

「ん?知り合い?」
意外だったようで黒尾が首を傾げる。

「ちょ、ちょっとね」
流石に歯切れが悪いゆめ。

それもその筈、

マジかよぉー
この人審査員だったんじゃんっ

ゆめの脳裏にはあの時の記憶が蘇った。

審査員とわかっていたら
あんな、あんな、、、

暴言吐きながら全速力で逃げたりは、、、、


「期待してんぜっ」

ポンっと肩に重みを感じ、顔をあげる。

「やってみなきゃわかんない、んだろ」
そう言ってニカっとしてみせる烏養。

少し唖然とするも、

「うん!」
自信満々な眼差で答えてみせる。




「へぇ、お前が烏養監督と知り合いだったとは意外だわ」
2人のやりとりを一頻り眺めていた黒尾がゆめの隣で口を開く。

「監督?」

「そ、烏養監督。今年から全日本の監督じゃん」

、、、へ
えええええええええ?!!!!

あああああの人
そそそそんなに凄い人だったの?!!!

「大丈夫か、顔色悪いぞ」

「だ、だいじょうぶ」

だが、更にここで追い打ちをかける敵が現れる。


「随分余裕だね、レン」

あれ?
この声、まさかっ


「と、徹っ!!」


「残念。今回は敵同士みたいだね」

でもね、

「手加減はしないから、安心しな」
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