長編夢

□#10 梟
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#10 梟

「ヒーロー参上ってね♪」
まるで梟のような髪色の男が舞い込んだ。

「ちょっと木兎さん、審査中でしょ。
こんなとこで油売ってていいんですか」
月島が呆れた調子で木兎に告げる。

「助けを呼ばれたら黙って見過ごすわけにはいかない!なんたって俺は、ヒーローだからな」
自信満々に笑い出す。


「木兎か」
牛若が口を開く。

「あっれえ、誰かと思えば牛若じゃん」
にやりと笑う木兎。


「まさか、牛若に男の趣味があるとはな」
そう言って牛若とゆめに近付く木兎。

「そんな趣味はないが」

「またまたー、隠さなくたっていいじゃん」

そのまま牛若の腕を掴み、

「誰にも言わないからさ」
ニコっと笑いかける。

「でも、これ以上こいつを離さないっていうんなら」
掴んだ腕に力を込める。

「話は別だ」


か、カッコいい
不覚にもゆめは思ってしまった。

なんか、
ほんとにヒーローみたいだ。

「フン、まあいい」
そう言って牛若がついにゆめから手を離す。

まるで悪役みたいだ。

「じゃあ、失礼します」
またな、牛若
と告げ、木兎はゆめと月島の肩を掴んでその場を立ち去った。


ロビーへと戻り。

「あ、ありがとうございますっ」
ちょっと興奮気味にゆめがお礼をする。

「別に大したことじゃない」
満更でもなさげに木兎がいう。

それをちょっと呆れ顔で眺める月島。


「ほ、本物のヒーローみたいでしたっ」

「がははは!そうだろ、そうだろうとも!」

「あの、名前聞いてもいいですか?!」

「おう!木兎光太郎だ!」

「木兎さんっ!
お、俺はレンっていいますっ」

「そーかそーか!
レンよ、もしまた何かあったら呼んでくれたまえ!
このヒーロー木兎様が助けてやるからなっがはははは」

「は、はいっ」

完全に上機嫌の木兎と
キラキラした目で賞賛するゆめ。

端から見ても結構面倒臭い光景だ。



「どうでもいいですけど、
審査大丈夫なんですか、木兎さん」
さすがに見兼ねた月島が口を開く。

「はっ」
と間抜けな声を出す木兎。
段々と蒼ざめていくのがわかる。
どうやら完全に忘れていたようだ。

『1374番の方、再審査のためUー6号室までお越し下さい』

「あ、僕の番号っすね」
月島がにやりと木兎を見る。

「じゃあ、木兎さんも審査頑張って下さい」

そう言い残し、太々しい笑みを浮かべ月島は再び、元来た道へと歩いていった。

「オオイ!ツッキーっ!!」
先ほどとは打って変わって情ない姿の木兎。

流石にマズイと思ったのか
「じ、じゃあ、またなっ」

そう言って月島が向かったほうへとダッシュしていってしまった。


『只今を持ちまして、第2審査終了となります。
合格者の皆様は、第2体育館へお集まり下さい。』

無残にも審査終了のお知らせが鳴り響く。

木兎さん
大丈夫だったかなぁ

ちょっぴり罪悪感のゆめであった。


気を取り直し第2体育館へ直行する。

総勢1500人の参加者は
見事、50人までに篩落とされた。
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