長編夢

□#8 筆
2ページ/2ページ




ーーー。

ついに始まった選抜合宿!!

総勢1500人の参加者から最終的に選ばれるのは、
わずか、20人。


一体どんなことをするのか
と待ち構えていたのに


『では、これより審査を行います。

まず、第一審査は』



「「「第一審査はっ!!!」」」




『筆記試験です』



「「「「ひ、筆記試験っ??!!!」」」


その場にいる誰もが度肝を抜かれたのだった。




場所、第1体育館。


ーーーカキカキカキカキキカキカキ

静寂のなか、鉛筆の音だけがうるさく響き渡る。


そんななか、
一応この物語の主人公、ゆめはというと


「ZZZ」

爆睡。

そして、

「ッチ」

心中穏やかではない及川であった。


この女(アマ)ァ〜
マジで襲ったろかっ!!

目を吊り上げながら
物凄い勢いで筆を走らせる。


筆記内容は意外と難問だ。
本当にやる気あるのだろうかと疑問を抱きながらも
これを突破しなければ自身も危うい及川は集中する。


あと残り10分。

さすがにプロ選抜は違うな
と口の端を上げる。


そして、
ーーキーンコーンカーンコーン

試験終了のチャイムが鳴る。


解放感と脱力感で会場が一気に響めいた。


及川は、
その苛立ちを隣のゆめに向ける

「おい」

「ZZZ」
だが、起きる気配なし

イラっとして
ゆめの耳元に近づき、

「随分と気持ち良さそうだね」

囁いて

「眠り姫」

フーっと息を吹きかける


「うひゃあいぃっ///」

思わず吃驚して飛び起きるゆめ。
どうやら耳が弱点だったようだ。

「な、何する徹っ///」
耳を真っ赤にしながら睨むゆめ。

その反応が良すぎてウズウズする及川だが、
一先ずグッと堪えて、

「何するじゃないよ、レン」
冷めた目で睨みつける。

「さっきの試験寝てたでしょ」

「うん」
きょとんとするゆめ。

あれ?
そんな反応?

「だって、さっきの全部英文だったし」
あんなの簡単に解けるわけ、、、

「ああ、だって俺、ハーフだから♪」
ニカッと笑ってみせるゆめ。

「は、、ふ?」

「父は日本人だけど、母がイギリス人なんだよね」
と少し照れ臭そうに説明する。

ああ、通りで
と内心ホッとしたような、
なんだか裏切られたような、
なんとも複雑な気持ちの及川だった。


「ハーフって俺と一緒じゃん」

ハッとして見上げると、
銀髪、緑目の長身男が居た。

「何キミ、誰」
ムッとする及川。


「ちなみに俺はロシア人とのハーフだけどな」
まるで及川を無視するようにゆめにむかって話しかける。
そんな長身男にさらにイラっとする及川。


「リエーフ!!」
刹那、遠くから長身男を呼ぶ声。

「何してる!!」

「げ、黒尾さんっ??!」

黒尾と呼ばれた男が近づいてくる。

「ったく、すぐ油売りたがる、、、って及川じゃん」

にやりと笑って及川を呼ぶ黒尾。
ムッとして睨みつける。

「どーも、久しぶりだね黒尾チャン」
お得意の爽やか笑顔を見せつける及川。
相変わらず、目が笑っていない。

「ま、今度は戦えるといいね」
ニコともニヤともとれる嫌らしい笑みを浮かべる黒尾。

「だね、叩き潰してあげるよ」
と爽やか笑顔に拍車がかかる及川。


正直、すげー怖い。
彼らの因縁なんて毛ほども知らないゆめにとってはいい迷惑だった。


ーーポンっ

と頭に重みを感じ、
見上げると

「俺、リエーフ!お前は」

ニカッとゆめに笑いかける。

「お、俺はレン」

「レンか、よろしくなっ」
さらにニカッと笑う。

「おう、よろしくなっ」
その屈託ない笑顔にゆめもニカッと笑ってみせる。

「////」

ズキューンっと音が鳴ったような気がした。


「へえ、レン、ね」

パシッとゆめの頭に乗っけた手を払いのけ、
興味津々に黒尾が覗き込む。

観察するように見つめられ
困惑するゆめだが、

「俺は黒尾鉄朗。
仲間はみんなクロって呼んでる。よろしくなっ」
ニコっと優しげに微笑んで手を差し伸べる。

あれ?
思ったより優しい
と安堵し、

「お、おう!よろしく!」
と差し伸べられた黒尾の手を握る。

が、
ーーグイッ

「!!」

引っ張られる。

「捕まえた♪」
見上げるとニヤりと笑う黒尾の顔。

すかさず耳元に口を寄せ
「キミ、ーー」

囁く。

「っ///」
ぐわっと赤面するゆめ。


パッと手を離しゆめを解放する。

ーーグイッ

「!?」
今度は襟元を強く引っ張られる。

パッと振り向くと

「と、徹?!」
黒尾を睨みつける及川だった。


「♪」
そんな2人を満足気に見る黒尾。



ーーピンポンパンポーン

『第1審査の結果が出ました。
参加者の皆様はロビーへお集まり下さい。
繰り返しますーー』

そんな中、審査結果を告げる放送が鳴った。


「じゃ、またね」
含みのある笑みを浮かべ、黒尾はその場を後にした。
次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ