アイドリッシュセブン
□報道よりスキャンダルより君と
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二階堂大和は金かアイドリッシュセブンの出演枠を出せば抱かせてくれる
そんな噂が流れ始めた。
もちろんそんなことあるはずがない。これまでもそしてこれからも
何かの飲みの席でベロンベロンに酔っ払った名前の売れてないディレクターが大和を誘って来たその時のジョークの返しで『んー。金か出演枠出されたら落ちちゃうかも〜』とケラケラ笑っていた
だがマスコミと言うのは憑依型俳優の大和が誰にでも嘘だとわかるような役を作りその場の笑いを取るために言った言葉でも本当のように作り上げる。
「大和さんどーすんだよコレ…」
寮のローテーブルに置かれた週刊誌には表紙と記事部分に『アイドリッシュセブン二階堂大和。積まれた金と出演枠抱かれた数は数え切れず?!』とでかでかと書いてある。
「いやいやいや。八乙女とか十さんならコロッといっちまうかもしれねぇけど流石に半分禿げてて脂汗滾ったようなおっさんだぞ?!」
「相手の話をしてんじゃねぇよ!!」
俺とミツ以外仕事でいなくてよかった。そんなことを考えていると
バンッと雑誌ごとテーブルに叩き付けられた三月の手を見てビクッと固まる。
普段ならこのように怒られてもどうってことは無い。だが流石に今回のことは大和もやばいと思ってるのか頬をぽりぽり書きながら、ヤバイよなぁとごちる
「はぁ…大和さんよく飲みに行くってテレビで公言してる八乙女と十さんや百さんとこにも記者が来たって。向こう3人は弁解してくれてるみたいだけど」
三月がそう言うとテーブルの端に置いてあったテレビのリモコンを取りニュースをかける。
画面にはちょうど八乙女への質問の場面だった
《二階堂さんがこの記事のようにいってるのですが八乙女さんは二階堂さんからこのように話を持ちかけられたことはあるのでしょうか?》
『ありませんよ。つーか。あり得ませんよ。よく俺ん家で呑みますけど。お兄さんビールと結婚する。って言ってるような男ですよ?確かにああ言うことを言った二階堂も悪いでしょうが、二階堂大和という人物を知っている人ならあれがその場の笑いを取るために言ったセリフだとよく分かりますよ。それにあいつ好きな奴いるらしいんでそんなことしないと思いますけどね』
八乙女への質問はそこで終わり今度は十が出て来た
《十さんはその打ち上げの場にいたそうですが、二階堂さんは本当にこう言ったことはあるのでしょうか?》
『無いですよ。そもそもあれ演技でしたしね。彼が本気でああ言うことを言うのだとすれば演技だと気づかず今頃もっと洒落になってませんから。演技に疎い俺でさえも、あ、遊んでる。って分かりましたからね。それに大和くん好きな人いるみたいだから本気でこんなこと言っても実際にはやらないと思いますよ』
確かに当たっている。半分酔っていて、隣に座っていたディレクターが気持ち悪くて取り敢えず2言3言遊んでさっさとその席を立ち十の隣に逃げたのだ。
「因みに百さんは雑誌のインタビュー中に聞かれたって。これ答えた内容」
テーブルに放置されてたもう一冊の雑誌を開くと百へのインタビュー内容にこの記事が書かれていた
《−二階堂大和さんとは普段から仲がいいとお聞きしたのですが今回の報道どのように思われますか?−
百)見た瞬間の感想は、あ、遊んでる。かな?
−遊んでいる?とは一体?−
百)大和こーゆう言葉で人をからかうの大好きなんですよ。だから本気でからかうならそれがからかってるって分からないくらい全力の演技でからかってくるんだよ!それにこーゆうからかい方は大和嫌いなはずだからこれからかいとかじゃなくて手っ取り早くその場を笑わせたかったか和ませたかっただけだと思うよ!
−様々な冠番組を持ってらっしゃる百さんはこのようなこと言われたことありますか?−
百)ありますよ!よく言われるのはお兄さんといいことしよう?って言って押し倒されてめちゃくちゃ擽られるの!お酒持ってるし危ないって言っても向こうも俺も酔ってるからもー引き際がなくて2人とも息できないくらい笑って終わるんだー。それに大和、絶賛片思い中だからそんなこと絶対しないよー》
最後に大きな巨大とも言える爆弾を百が落としインタビューは終わっていた
「あぁぁ…マジかぁ。なんで八乙女も十さんもそれをバラすかなぁ!」
「あんたは!八乙女や十さん、百さんに文句言える立場じゃねぇだろ!!確かに俺たちも大和さんが枕営業をするとは思ってねぇけど!うちは過半数が未成年なんだから飲み会とかでの発言も注意しろよ!」
正論中の正論にぐうの音も出ず大和は押し黙る。
「それに。百さんが最後に言ってた好きな人。あれにも気をつけろよ。やっと俺たち売れ出したんだから。熱愛報道。芸能界引退とかマジで洒落になんねぇから」
そう言う三月の目はどこか辛そうに見えた。
「じゃあ、ミツが俺を、買って?」
「は?」
スルリとテーブルに置かれたままの三月の指を突けば突かれた三月から素っ頓狂な声が帰ってくる
「大和さん好きな人いんだろ?そーゆうのは好きな人に言った方が良いんじゃねぇの?あ、いや。でも今言われるとマズイか」
1人でブツブツ言う三月にクスリと笑う
「だーかーらー。言ってんじゃん。好きな人に」
スルリと出た言葉に三月の動きが止まる
「どうせ来週の週刊誌にはこの事よりでかでかと俺の片思い記事が載るんだからもーいいじゃん?」
「いや、まぁ。そうだけどさ。まじで大和さんの好きな人って俺?」
「そーですよ。すいませんねぇ。こんなガタイのいいお兄さんが21にもなって小学生並みの可愛らしい三月くんに片思いなんかしちゃって」
この言葉に嘘もからかいもない。そのせいか普段は飄々と笑っている大和の顔はほんのりと赤い
「身長は関係無いだろ!!え、いや、マジかぁ」
2人の間に沈黙が走る。
どうせ、バカ言ってんじゃねぇよ。とかアホか!!そんな言葉が返ってくると思い何を言われても大丈夫。笑ってやり過ごせると自分を叱咤激励している大和に帰ってきた言葉はそれはそれは意外なものだった
「…いーよ?買うわ。その代わりその気持ちも大和さんの体も全部寄越せよ?んで返品不可だからな。そのうちこっちから言おうと思ってたのに」
そう言う無いなや腕を掴み引っ張られていく
「へ?ちょ、ミツ?どこ行くんだよ?」
「部屋。」
無理やり三月の部屋へ入らされると三月が後ろ手に部屋の鍵を閉めた
「ミツ?」
不安と期待が入り混じった声で名前を呼べば、胸倉を掴まれ無理やり少し下を向かされる
頭突きでもされるのかとギュッと目を閉じ身構えば唇に触れる微かな暖かみにびっくりして目を開けると目の前に三月の前髪が見えた
一瞬だけ触れ離れたと思ったら再びキスが落とされる。
驚いて開いた口にヌルっと厚みのある舌が入ってきた
「んっ?!…ふ…ぁ」
舌先で歯列をなぞり奥に逃げる舌を吸われ大和から声が上がる。誘いだされるように三月の口内へ舌を入れれば歯で軽く噛まれる
「んんっ、ぁ、ふぅ…」
ゆっくりと離れると褒めるかのように触れるだけのキスが落とされた
「大和さん甘いな」
「…なんなの、お前さん…お兄さんのライフはゼロよ…」
耳元で囁かれた甘い声と言葉に流石に腰が抜けたのか大和はその場に座り込んでしまった
「つーわけでこれから覚悟しててな?」
可愛らしい声と態度からは想像も出来ない欲情を含んだ目で見つめられ大和の背筋が震えたことは多分言わなくても三月も分かっているだろう
しばらく休んでていいから。そう言って部屋から出て言ってしまった。
「…プラマイゼロなのかマイナスなのか…いや。プラスなのか?」
独り言ちる大和の目も隠しきれない欲情を含んでいたのを知っているのはここにいない三月のみ。
未成年組と壮五が帰ってくるまで1時間。
落ち着いた大和がリビングへ戻り再び三月からの爆弾を受け取るまで15分。
そんなこともつゆ知らず何度も深呼吸をし息を整える大和だった。