あなたと飛雄の五十音。


□け
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今日は朝からなんだか暑い日だった




太陽も


そして飛雄の視線も



「そんなに見つめても何も出てこないしどこにも行ったりしないよ?」


『………わかってる』



いつも通りのムスッとした顔で返す可愛い私の可愛い彼氏



最初に付き合ったのは高校1年生の夏


あの日も今日と同じ暑い日だった




何度も付き合っては別れて


でもやっぱりまたお互いに惹かれあって


気付いたら10年のお付き合い





お互いのダメなところもいいところも知ってて


でもそれすらも愛おしい彼




ソファで寝転がっている彼に手を伸ばすとそっとその手を彼の強く、だけどしなやかな手が包んでくれる




長いまつ毛が揺れる


彼は私の手を握ったままゆっくり起き上がった



『…沙織』



いつもとは違う雰囲気



「はい」



『沙織はいつも俺を支えてくれた


俺が挫折しそうな時も

俺が間違って違う道に走ってしまいそうだった時も』



「……だって飛雄危なっかしいんだもん」



『だから今度は俺が沙織を支えたい


ずっと一緒にいて


沙織のそばで俺も一緒に目の前の壁を乗り越えていきたいんだ』



「…うん」



『だから


俺と結婚してくれ』




まさか


プロポーズ………?



震える私の手の甲に優しく落とされるキス




私の気持ちはずっと変わらない



ずっと飛雄の隣にいたい


ずっと飛雄と歩んでいきたい


たとえどんな高い壁が2人の行く手を阻もうとあなたと、飛雄となら乗り越えていけるって信じてる


だから………


「よろしくお願いします…」



どちらからともなく交わされるキス


飛雄の香りにぬくもりに満たされる私の身体


ずっと忘れない


これはきっと幸福の味
 

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