あなたと飛雄の五十音。


□お
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明日は大会


私たちにとっては最初の大会であり、3年生にとっては最後の大会となる




……寝れない


いくら寝返りを打っても眠気が起きない






彼は寝れただろうか…



1ヶ月前から付き合いだした彼の顔を思い浮かべる



いや、やめよう…

もっと寝れなくなる…!!!





羊を数え始めたけど眠れる兆しがない





こんなことしてもきっと眠れない





明日、



私は私のベストを


飛雄は飛雄のベストを


尽くせますように………





ぎゅっと握りしめたスマホが震える




画面に表示されたのは



‟飛雄”






えっ…



どうしたんだろ







画面のバーをゆっくりスライドする





聞こえてきたのは…



『……もしもし』




ずっと聞きたかった彼の声だった









「も、もしもひッ!」



思わず噛んでしまう私



電話の向こうから笑い声が聞こえる







こんなやり取りだけでも私の鼓動はスピードを上げる





「どうしたの……?」



『いや、お前の声が聞きたくなって』



急に熱くなる体温



もう、


本当に



天然のジゴロが………!




「も、もう!!!


どうせ飛雄も眠れなかったんでしょ?」



私の言葉からあく一瞬の間



『…なんで分かった』



ふてくされてる彼の顔が目に浮かぶ



「だって、私も同じだもん」



『そっか………


明日はいよいよ大会だな』



急に本題に入る



「そうだね……」



また緊張の波が押し寄せてくる




『でも…………』



何か言いかける彼



電話を通じて感じる彼の吐息




『今まで明日のために頑張ってきたんだし、お互いベストを尽くそうな』



彼の言葉で身体を縛り付けていた緊張がほぐれる




「……そうだね!!」




そうだ


明日のために私たちは頑張ってきたんだ





‟明日、



私は私のベストを


飛雄は飛雄のベストを


尽くせますように………”




………同じことを思っていてくれたなんて






何か熱いものがこみ上げてくるのを感じる





『…沙織?』




「ん?!

なになに?」




『さっき沙織は寝れないから電話したんだろって言ったけど……』



「………?」



『本当は………』




彼の言葉を静かに待つ




『……沙織におやすみって言いたかっただけなんだ』





……?!?!?!



超ド級の爆弾を落としてきた





………さすが私の彼氏





『…おやすみ』





電話の向こう側の彼の顔が目に浮かぶ





…こっちも素直になっちゃおうかな




「…おやすみ!!!


大好きだよ、飛雄」




『………!!!!!!!』




最後にこっそりと付け加えた爆弾は思ったよりも彼に効いたらしい



「じゃあね!」


『……じゃあな』





電話を切った後の一瞬の静寂さえ心地よい





超絶かっこよくて超絶かわいい‟最強”の彼氏からの電話は私にとって最高の睡眠薬になった
 

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