あなたと飛雄の五十音。


□え
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『じゃあこの問題を……


影山解いてみろ〜


おーい、影山!!!』




『先生、また影山くんにあててるよ…』

『まったく先生も懲りないなぁ〜』


クラスの女の子たちがクスクス笑い、男の子たちは呆れ顔で彼を見る




あーあ


また私の出番かぁ…




私の隣はその問題の彼



影山飛雄くん




ざわざわしてる教室とは裏腹に彼は静かに夢の中


「…影山くーん、問題当たってますよー」




彼のご機嫌を損ねないようにそっと話しかける



それでも彼は起きない




『…もう一回で起きなかったら武田先生に報告と、

ついでに藤崎に答えてもらおうかなぁ!』





ええええええ!


それは困る!!!!!!



ただでさえ苦手な数学なのに

しかもいつもなら先生が当ててこない発展問題……



影山くんに起きてもらわないと……!




「か、影山くん!!!!!」



想像以上の声が出た



慌てる私と対称的にゆっくりと開く彼の綺麗な瞼





『…んっ?』





どうやら本気で寝ていて今の現状を分かってない様子





「あのね、今先生が黒板に書いてある問題を影山くんに当てていて……」




そこまで聞くと彼は立ち上がり黒板へと歩き出す




……頑張って



心の中でエールを送る





『今まで寝てたヤツにこの問題が解けるかなぁ〜?』



先生が追い打ちをかけるが寝起きでそれにも気付いていない




スラスラと解答を書き終えると席に戻ってきた




す、すごい………



合ってる…!!!!




『お、あってるじゃんか


よぉしオーケー!


…でも解けたからって影山また寝んなよ!!!』





先生も驚きを隠せていない





「…すごいね!!!」



思わず影山くんに話しかける



『……昨日月島に教わった』



ムスッとした表情を崩さず答える彼




あ〜

5組の月島くんかぁ〜


長身で女の子に人気の……




そんなことを考えていると隣から感じる視線




?!?!?!



そんな怖い顔してどうしたんだろ…





『…あ、ありがとな』




耳まで真っ赤にして照れ臭そうに言う彼に思わずこっちも一気に体温が上がる




「い、いいえ!!!」





お礼を言おうとしていたのか……



私の返事を聞くと再びウトウトし始める彼




彼が一瞬だけ見せてくれた笑顔に私の心臓がギュンと持っていかれた気がした





…また当たって起こしたら君はどんな顔をするんだろう




そんなことを思いながら私は授業に戻る




まだ耳を真っ赤に火照らせている彼を残して
 

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