あなたと飛雄の五十音。
□あ
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クラスメイトたちが続々と帰っていく中、机に突っ伏して寝ている男子が1人。
影山くんだ………
喋ったことはないけど校内ではものすごく有名人。
多分本人は知らないだろうけど…
友達のひよりと帰る約束をしていた私は隣のクラスに来たんだけど…
肝心のひよりがいない。
「困ったなあ…どうしよ」
誰もいない教室に私の声が響く
とりあえず寝ている影山くんに聞いてみようかな…
「あの………」
話しかけても起きない彼。
彼の整った寝顔を覗き込みもう一度話しかけてみる
「あの……!」
ゆっくりと開く瞳
けどまだ焦点が定まっていない。
「ひ、ひよりちゃん知りませんか?」
彼は顔を机から離し、ゆっくりと時計を見る
『あ゛ッ!!!』
彼から発せられた声に思わずすくむ足
光のような速さで仕度をし始める彼
「あの……」
私が話しかけたのと同時にひよりが教室に滑りこんでくる
「ごめん!沙織!!!先生に呼び出されてた!!
帰ろ!!!」
「うん!!!」
『…沙織?』
突然名前を呼ばれ振り向いた私の前には影山くんのちょっと照れくさそうな笑顔があった
『…お、起こしてくれてありがとな』
「はい!いいえ!!」
『…どっちだよ』
あ、
笑った
『…じゃあな』
彼はいつものムスッとした顔に戻ると教室を出て行った
静まり返る教室とは裏腹に私の鼓動は大きな音をたてていた…