短編集
□かまって!
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今日の僕は機嫌が悪い。
だって大貴がかまってくれないから。
今日は仕事終わりに大貴の家で過ごすって約束してて、温かく出迎えてくれたのはいいけど、大貴はゲームに夢中。
かまって欲しくて広いソファに座る大貴の足の間にちょこん。と座って邪魔してみても、大貴はテレビを真っ直ぐ見てる。
僕と大貴の身長差はほとんど無いから大貴は僕の頭が邪魔みたい。
だから僕の顔の真横から顔を覗かせてゲームするけど、それのせいで大貴の息が耳に当たってくすぐったい。
声を出さないように耐えてると、突然大貴が耳元でふふっ、って笑った。
ひぇっ!って声をあげそうになったけどなんとか口を閉じて抑えた。
すると、大貴はそれを面白がってるらしく、ゲームをステージクリアすると、コントローラーを置いて、僕を抱きしめて僕の肩に顎をのせる。
むかつく!!
うぎぎ...と歯を食いしばってときめかないようにしてると、大貴が小さく溜息をついた。
はぁっ....って。
そして一言、こういうんだ。
「侑李」
いつもより低い声で、普段呼ばない名前で呼んでくるから流石にびっくりして反射的に大貴を振り返った。
そしたら眼前には大貴の吸い込まれるような瞳。
一気に頬が紅潮するのがわかった。
大貴は動かなくなった僕にゆっくりと近づくと、ちゅ。っと音を立ててキスをした。
そのまま何回かキスをしてくれたんだけど、頑張って横を向いてる僕はちょっと辛くて、
大貴がそれに気付いて僕の身体ごとまわして向かい合う形にしてくれた。
何回か動物の挨拶みたいにキスをかわしてからゆっくりと深いものにしていく。
お互いの吐息と水の音だけが頭に響いて、なんか、ぼーっとしてきた。
大貴が僕を抱きしめたままゆるっと動いたかと思うと、大貴の向こうは天井。
つまり押し倒されてて、
また深いキスをして、そろそろ舌が僕の口の中を蹂躙しに来るかな?なんて、思ってたら大貴の唇が離れた。
え?え?どうして?
って混乱して大貴を見たら。
「はぁ...」
という吐息を吐く大貴がそこにいて、
とろけて少し気だるさが滲む瞳に半開きの唇、八の字みたいに下がった眉。
いつもは冷静な僕でも流石にムラっときた。
早く〜、と心の中で大貴を急かしてたら、大貴が僕に覆いかぶさってきた。
いや、まさかこれは?
「大貴?だーいーき?」
返事がない、ただの屍のようだ。
大貴の鎖骨のあたりに埋まった頭をなんとか出して大貴の顔を見ると、クリクリの目は閉じていた。
寝てるーーーーーーー!!!
ぺちぺち。と頬を叩いても起きる気配はなし。
そんな大貴を見てたらなんだか僕も萎えちゃってまあいっか、って一緒に寝ることにした。
もちろん、起きたら説教タイムだけどね。