お抱えXXX
□一
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「おはよう、朝練お疲れー」
朝練を終えて、佐久間達と教室に向かう途中。
ポンと肩を叩いて来たのは、同じクラス、隣の席に座っている日谷。
『性格が良くて頭が良くて運動能力も抜群で、しかも顔が整っていて最強!』と言っている女子達は勿論、男子達からも支持を得ている。
試験の順位は俺と上位2枠を争っていて、勝敗率は半々。
同点1位も珍しくない。
初等部で友人と思われる同年代から『天才だよね!』と言われて、少し悲しそうな顔をしていたのを今でも覚えている。
本人曰く、『頑張ったのに"テンサイ"で終わるのってちょっと虚しくない?』だそうだ。
「あぁ、おはよう」
不機嫌そうにしている佐久間は置いておいて、挨拶を返す。
「いつもこの時間だけど、寝坊でもしてるのか?」
源田が言うと、まさか、と笑う。
「寝坊はたまにしかしないよ、やらなきゃいけないことがあるからね」
「日課みたいな感じか?」
「まぁそんなとこ。デコは今日もいいデコしてんなぁ」
「デコ言うな」
辺見が額をさわる日谷の手を払う。
「じょーだんじょーだん、そんなに怒るなよ禿げるぞ」
「鬼道さんコイツ一発殴っていいですか?いいですよね?」
「落ち着け辺見、日谷も、あんまりうちのやつをからかわないでくれないか」
「はいはい」
クスクスと笑う日谷が佐久間を撫でる、反省していないのが見え見えだ。
佐久間も日谷の手を払い、睨む。
「ほら、ペンギンキャンディー」
「寄越せ」
「手慣れてるなぁ」
個包装されたペンギン型の飴を佐久間と辺見に手渡す。
「ほい、源田と鬼道も」
「さんきゅ」
「ありがとう」
「咲山と寺門は超苦いチョコだよな」
「お、ラッキー」
「よく覚えてるよなぁ」
だろ?と日谷が自慢げに言う。
「じゃあお先、ザリガニのエサやり当番だったの忘れてたわ」
「ドンマァイ日谷く〜ん」
「2組は明日佐久間だって聞いたけどなぁ?」
「マジ?」
やべぇ忘れてたと焦る佐久間に日谷が近づいて、耳元で何やら囁く。
「……〜っテメェ!」
「あはは!バァイ!」
佐久間が怒ると同時に日谷が走り去る。
「何だって?」
「嘘だって!アイツムカつく!ノート貸してくれるけど!鬼道さんに近付くし!」
「それ関係なくないか?」
「…………ちょっと待て」
源田が佐久間に制止をかける。
「何だよ源田!」
「明日の当番、佐久間だぞ?」
ほら、と源田が生徒手帳のカレンダーを見せる。
明日の日付の欄に"当番・佐久間"の文字が。
「……………どっちだよ!」
「痛!俺に当たるな!」
…………日谷は良いやつなんだが、からかい癖があるというか何というか。