逆裁部屋

□仕事と僕、どっちが魅力的?
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今日は土曜日。午前中は仕事の用件があるからと出て行った御剣は帰るなり持ち帰ってきた書類の束に目を通し始めた。
それから三時間も経過している。

「御剣…僕のこと忘れてるだろ。」

金曜日の夜に泊まったあと、早朝からパジャマをベッドに脱ぎ捨てさっさと着替えて仕事に行った御剣は仕事モードで帰ってきたと思ったら僕には見向きもせず仕事に没頭し始めた。
仕事の邪魔はしたくない。けど忘れ去られるのも悲しくなる。しかし、もう“仕事モード”なんだよなぁ、休日まで仕事持ち帰って来てやるってこいつ一体いつ休んでるんだろ?そう思ってフとまた御剣を見遣る。
資料を借りるため何度か仕事中の御剣には会ったがここまで集中する御剣は見たことがない。まぁ、曲がりなりにも来客が来ているからだろうが、普段の仕事になると御剣はいつもこんな感じなんだろうか。余りにも鮮明に想像出来て思わずクスリと笑ってしまった。

(何て言うか…そろそろ気付いちゃくれないかな。あっ!そうだ!)

本当は仕事の邪魔はしたく無い筈の成歩堂だったが、恋人をなおざりにする御剣にどうやって触れたり声をかけずに気を引く事が出来るか試してみたくなった。

(一度着てみたかったんだよね、アレ。)

声に出さないようニヤリと笑うと僕は静かに寝室へと向かった。そこにあるのは御剣のパジャマ。彼ジャケならぬ彼パジャマだった。成歩堂は普段楽なスウェットを御剣の家に持参しているが、御剣のパジャマは薄紅色のシルク素材で凄く着心地が良さそうな物だった。寝るときは結構な確率で脱がし脱がされるから、触り心地が良いのは立証済みである。

(うわっ、サラサラスベスベ。しかも御剣の匂いがする。)

スンスンッと袖を嗅ぐと仄かに香る御剣の体臭。いつもは香水を着けてる御剣も風呂上がりからのパジャマからはそのままの御剣の匂いがして酷く落ち着いた。

(香水も嫌いじゃないけど、アレはアレでドキドキすんだよな。特に離れた後に服に匂いが着いてたりすると…。)

サイズはあまり変わらないから窮屈でもなければぶかぶかでも無いが、上着の袖や足の丈がやや長い…そこに些か不満と言うか、若干男としてのプライドが傷つくも何とか立ち直り御剣の居る部屋へ歩み寄った。

(とりあえずここは少し離れたソファに座って様子見しよう。)

ソファへ座って御剣を見る。が、書類から目を離す気配は一向にしない。

(なんか腹立つな…次はどうしようか。)

そう見渡してソファの上に乗ってるトノサマンクッションに目をつける。そいつを手に取りギュッと抱きしめるとゴロンと横になった。
 
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