逆裁部屋

□風邪にはご用心
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土曜日の早朝、晴れやかな空とは裏腹に秋風の肌寒さを体感しつつ僕は急ぎ足で恋人の部屋までたどり着いた。

「ふっっっくしゅん!」
「ハハ…お前が風邪なんて珍しいね。」
「笑いたければ笑えばいい。油断したつもりは無かったがなる時はなるものーーっくしゅん!」
「おいおい、風邪薬は飲んだのか?熱は?飯も食べたのか?」
「薬は昨晩飲んだまま、熱は…知ると余計しんどくなるから測ってない。食事も…まだだ。」
「そんなんじゃ治るものも治らないぞ、とりあえず布団に入れよ。僕はお粥作るから」
「ムッ…すまない」

御剣が風邪を引いていたのは一昨日の裁判の時に知っていた。
その時はまだ引き始めだったらしく、軽く咳き込んだり休憩中に手洗いやうがいにイトノコさんが持ってきた加湿器(風邪引き中ずっと持ち歩いてたりして)にお世話になってたりと、通りかかるだけで風邪を引いてますと言うのが伝わってきた。
そして昨日の夜に酷くなったみたいで看病メールが来て今に至っている。


「後は風邪薬と水に…あっ、替えのパジャマとかも用意しとくか。あとタオル。」

手際よくお粥と薬を用意し御剣の元へと移動する。サイドテーブルにお盆を置き横になってる御剣を見る…が規則正しい寝息が聞こえてきた。
お粥もまだ熱いし暫く寝かせてあげようと立ち上がり、替えのパジャマと汗拭き用にタオルを準備しに洗面台へ
タオルの信じられないくらいの触り心地に僕の知ってるタオルじゃない…!と冷や汗をかきつつも御剣の元へと向かった。

「んっ…すまない…少し寝ていたようだ。」
「良いって、丁度準備が整ったところだし。はい、お粥」
「………。」
「えっ、何?変なものは入れてないけど、それとも食欲無いの?」
「いや、頂こう。」

御剣が成歩堂からレンゲを受け取ろうとしたが思いの外、熱が酷いみたいで成歩堂の持つ手の位置と全く違う場所に手を伸ばし始めた。

「お前…辛いなら辛いって言えよ。何のために僕が居ると思ってるの?一応…恋人なんだけどな。」
「うぐぐ…すまない。」

いつも自信家な御剣のしゅん…となる姿に不覚にもドキッとしつつ、レンゲからお粥を掬うと自分の口に含んだ。

「な!なるほ…むぐっ!?」
「ンッ……チュル…はぁ…どう?食べれそう?」

成歩堂の献身的(?)な看病に御剣もやっと薬まで飲み終え、体拭くからとパジャマのボタンに手をかけた成歩堂の手をしっとりとした熱い手が制御した。

熱のせいか虚ろげだが鋭く射る御剣の瞳と眼があった。
「成歩堂、その、だな…。」
「なんだよ御剣。汗拭かないと体が冷えるーーーってウワッ!?」

刹那、制御していた手を引っ張られ御剣の上に押し倒す形で倒れ込んだ。

「みつるぎ?…っ!!」

跨いだお尻に御剣の硬いモノが当たる。

「なっお前…」

一気に体が熱くなるのを感じた成歩堂は一旦退こうとするも、御剣の掠れた声で「行くな」と言う静止の一言にピタリと体が動かなくなった。

「これ以上は、我慢出来そうにない。」

欲と熱のこもった掠れ声にゾクゾクする躰と緩く立ち上がった自身を隠しきれず軽く腰が揺れた。

風邪なのに、熱で辛い筈なのに…
いつもと違う御剣の姿に胸が締め付けられる。労り看病したい自分とそんな御剣と繋がりたい自分との心の天秤がユラユラと揺らいでいた。

が、次の瞬間耳元で囁かれた一言で呆気なく揺らいでいた天秤が傾いた。

「君自身で私の熱を治めてくれないか。成歩堂。」

自分の欲が堰を切ったように溢れだした。
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