ヤシャスィーン
□犀利の旅人
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ずいぶん遠くまできたものだ
小高い山からは遠くまで見渡せる、故郷から離れてエクバターナを目指す旅ももう終盤だ。故郷の島国では楽園と呼ばれる場所が海の向こうにありそこでは人々は幸せに暮らしているらしい
そこで故郷を飛び出してやってきた
人の話を聞くうちに楽園は世界で一番栄えてる町ではないかという結論にたどり着いた。
遠くの方にエクバターナの影が見える
後少しだ、嬉しくなって馬を走らせた
森に入って、川を見つけたので馬の手綱を握って浅瀬へ誘導する。馬を洗うついでに体も清めてしまおう
そう思って服を脱いで岸に置く、今身につけているのは耳飾りと金の腕輪数個、金の縁取りの中に紅玉を入れたネックレス、翡翠の足輪だけだ。これは最終的に金に困ったら売るつもりのものだ、だから無くしては困る。
故郷は金が豊富に取れたから安かったがこちらでは大変値がはる物になった
「どうどう、いい子だ」
馬を洗うと土埃で灰色だった毛が白くなる。馬を洗い終えた後、陸に連れて行き、今度は自分の体を清める。
「こんな所に馬が、なっ!!お、おい!」
「どうしたんだ、シャプール殿っ!?」
男2人の声がして慌てて振り返る、馬を取られては困る。急いで岸に向かうと男2人が慌てて止める
「待て待て!!服を着ろ!!」
「あぁ、服は着るよ。だけど私の馬から離れてくれ、その馬がないと困るんだ」
「わかった!わかったから!」
2人の男が離れて律儀に後ろを向く、その間に服を着て、馬の側に行く。二人と戦う事を避けれて安堵した、見れば男達は私よりも強い。戦えば殺されているだろう
「見苦しいものを見せてすまなかった、着替え終わったよ」
「いや、こちらこそ失礼した
それよりどこに向かっているのか?」
髪を一つでまとめた男が訪ねた
もう1人の男は顔をそっぽへ向けている
「ああ、エクバターナへ向かうんだ
それよりそちらの御仁は大丈夫か?」
「ああ、シャプール殿には少々刺激が強すぎたらしい
それにしても奇遇だな俺たちは今からエクバターナに帰る所だ。よかったら案内しよう」
「それはありがたいが、そう言って何度か売り飛ばされそうになったからな、御2人は信ずるに足る人物か?」
「パルスの騎士はそのような事はせん!!」
今まで黙りこくっていた男が怒鳴った。女の裸ごときで喋れなくなる男がムキになって反論するものだから可笑しくて笑いが込み上げる。
「あはは!別に本気で疑ったわけじゃない。失礼した。そうだな、ではご一緒してもよろしいか?名乗り遅れた名前という」
「ああ、構わない
もとより誘ったのはこちらの方だ。俺はダリューンだ」
「俺はシャプールだ、どこから旅して来たのか?」
「ここからずっと遠くにある小さな島国だ、御二人は武人とお見受けするが階級はどちらにおありだ?」
「俺もシャプール殿もパルス軍でマルズバーンを任されている」
マルズバーンと聞いて驚いた
慌てて馬を降りて膝をつく
「これは失礼いたしました、マルズバーンの武人とは知らずとんだ非礼をいたしました。どうか御許しください」
「いや、そのような事はしなくていい!!そもそも旅人のお前に軍の階級も関係ないだろう」
「シャプール殿のおっしゃる通りだ
さぁ、日が暮れる前に行こう」
「ありがとうございます」
馬に跨って二人の後を追う
パルスが近づくにつれ期待が高まるのを感じた