□3. アンデシン
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※ 宍戸視点



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最近、あいつは俺に冷たい。


いつもなにかと俺に頼りっきりでべたべたしてくるあいつが、ある日の朝練から急に人が変わったように冷たい態度をとるのだ。


挨拶はするものの、


「おはようございます」


一言ぼそっと言うだけ。

いつもなら
「おはようございます宍戸さん!!
今日は朝から暑いですね、日焼けしそうなので長袖羽織ってきますね!」

って一言二言つけてくるんだけどな。





俺、あいつに何かしたか?





「おい長太郎、これ」


「そこに置いておきました。それじゃ」



俺が何を問いかけても長太郎は真顔で俺の横を通り過ぎていった。

おい。
先輩に向かって何なんだよあの態度。むかつくな。


でも、むかついてるはずなのになんで直接言えねーんだろ。むかつんだよ!の一言くらい言えんだろ俺。

変に気遣って、これじゃ激ダサだな。





かと言って、あいつとどう関わればいいかわからねえ。これじゃダブルスの相方として失格だ、練習どころの話じゃねえ。



ぼーっと悩んでいる俺の近くにすました顔してコートの隅に佇む奴がいた。

あいつに頼るのは癪だが仕方ねーな。




「忍足、」


「なんや、宍戸」


「最近長太郎が冷たいんだ。
何か知らねーか」



俺の見間違えかもしれねーが、あいつの口角が少し上がった気がした。
何にやついてんだあいつ。




「そんなん俺に聞かれても知らんわ。本人に直接聞けばええ話やろ」




確かにそうだ。忍足が知るはずないよな。
あいつが俺より長太郎のこと知ってたらなんか悔しいし。


ん、……悔しい?なんでだ。



……まあ、それは置いておくとして

あいつはまだにやついてるし、
長太郎はもうずっと俺と目すら合わせてこねーし、



「意味わかんねー……」



あーむかつく。


でもむかつくだけじゃない気がする。
このむしゃくしゃした感情の奥にある寂しいような気持ち。気持ちに自覚したら鼻の奥がツンとなるのがわかった。



いつも隣にいるはずのやつがいないとき
いつも笑いかけてくれるやつが目も合わせてくれないとき
これが夢じゃないとなると、

不安になることがひとつある。




もしかして、嫌われたのか。

嫌い、か……すっげー嫌だな……





そうじゃないとしたら、

俺の知らないところで悩みでも抱えてんのかな、俺に相談してくれればいいのに。

俺の知らないところで女とでも遊んでんのかな、俺にも話してくれればいいのに。
いやむしろ俺と、って……あれ、




「意味わかんねー……俺」






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