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□⒈ ファイブロライト・キャッツアイ
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※ 鳳視点
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最近、彼は俺に冷たい。
いつもなら練習終わりに俺がベタベタとスキンシップをとれば宍戸さんは優しくあしらってくれるのに、
「こんなとこでくっついてくんな馬鹿」
って言い捨てて俺の方なんて見向きもせず帰っていくのだ。これはおかしい。
常識なんてものはいとも簡単に崩れるし、己の心身の強さで崩してきた人間を間近で見てきたからそんなことはわかっているのだけれど
常識は時に、崩れれば酷く悲しむ人がいることも事実なのだ。
宍戸さんは包容力と面倒見の良さに長けていて、無愛想な中にも優しさがある先輩だという俺にとっての常識はここ数日で崩れかけている。
宍戸さんの態度が冷たくても、俺の憧れだということに変わりはないのだけれど……
もしかして:嫌われた……?
「なんや、寂しいんか?鳳」
「忍足さん!」
頭を抱えた俺の頭上には忍足さん。身を乗り出して驚いた。
なんだこの人はどこからでも沸いてくるのか。
「自分ら見てて思うんやけど……最近距離感じるんは俺の気のせいなんか?」
「俺も距離感じてるのでたぶん気のせいじゃないです」
なんだこの人は何でもわかるのか。天才って怖い。
「あのな、俺考えたんやけど……」
「はい」
「自分、宍戸に嫌われてるんちゃうか」
宍戸さんは俺の側にいてくれるという俺の中の常識が崩れていく音がして
怖かった。
第3者から見てもそう思われるなんて、
宍戸さん……