ラブカルチャースクール 3

□9章 Lesson チャージ
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チワワは迷っていた――――。

靴を脱いで忍び足をしながら、某文学小説風に一人で心の中で呟く。

ここまで来たけど、どうしようかな……。

壁伝いに背中を這わせて、さっきから廊下を行ったり来たりしていた。

昼休みにまたジュリに怪しまれながらも、向かおうとしている場所は――――セイジの自室だ。

連日尋ねるのは流石に気が引けたけど、昨日結局サクランボのキャンディーを全部舐めてしまってストックがない。

コンビニに売っているかとスクールの途中にあるコンビニに寄ってみたけど、サクランボのキャンディー自体売っていなかった。

ネットで調べてみれば良かったかな?
だけどあのキャンディーは、セイジから貰いたい。
舐めている間は凄く安心出来た。

まるでキャンディー中毒になってしまいそうだ。

廊下の曲がり角とエレベーターをキョロキョロ見やり、セルジュ、もしくは他の講師が来ないかと様子を伺う。

『こんなことしているくらいだったら、早く行って飴だけ貰ってしまえばいい!』

『いやいや! 飴くらい我慢しなきゃ! セイジだって忙しいんだから、梅キャンディーでも舐めればいいじゃない!』

『桜と梅は違うわよ!』

私の中の葛藤が、二匹のチワワになってグルグル回りだしてきた。

「やっぱり……やめとこう」

こんな風に情けなく悩むなら、却ってセイジに迷惑掛ける。

帰りにスーパー行って、似たような飴を探してこよう。

そう思ってエレベーターへ戻ろうと、踵を返すと――――


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