桔梗
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「遅かったの紫雲。花嫁でも拐ってきたんか‥冗談じゃ」
紫雲さんは答える代わりに、ジロリとお爺さんを睨んだ。
「名前を聞いても良いかの?」
「私は天音凛です」
「そうか、凛と申すのか。儂は猿飛ヒルゼン。ここ、木ノ葉の里の火影じゃ」
柔らかい笑顔で自己紹介をする猿飛さんに軽く会釈をした。
やはりこの人が里の偉い人だった。見た目は優しくて親しみやすい印象のお爺さんではあるが油断は禁物だ。
ここでの話し合いにより、生死のどちらかの道を歩むことになるだろう。
生きるにしても死ぬにしても、その過程は何よりも大切だ。
不思議と怖くは無かった。
お互いニコニコと笑顔を向けている私たちに紫雲さんは、コホンと咳払いをした。
「それくらいにして、こいつを連れてきた理由ですが、単刀直入に言うとこいつは‥異世界から来ました」
「なに?異世界じゃと?それは真なのか」
ダンッと机を叩いて立ち上がる姿はとても驚いている様子だった。
「嘘をついていたら既に俺が抹殺しています。気づいたらこちらの世界に来ていたようです。原因は落雷によるものだと。処罰はどうなされますか?」
「‥ふむ」と顎髭を触りながら、考え込んでいた火影様はこちらを向いた。
「それらしき書物を読んだことがあったのだが、なんせ昔の事だったからの。探してみるが、凛はこの世界の事について心当たりはあるのかの?」
「‥私の国では500年程前に忍者はいたと記録されていますので何か関係しているかもしれません」
「そうか。昔というと、今はもういないんじゃな」
「そうです。忍者の末裔は今もいますが、戦うことはありません。平和な国になりましたから」
「平和な国か‥」
猿飛さんはそう呟いて遠くを見つめた。
この国では戦争がいつ起きてもおかしくないのだろう。
簡単に抹殺という言葉が出ているのと、紫雲さんから放たれるオーラのようなものが常人とは違うものである。
一般人の私からでも感じ取れるほどである。どのくらいの戦場をかけてくればこのようになるのだろうか。
こちらに来ても、安全な場所はないという事を思い知らされた。