許すまじ運命

□プロローグ
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「最悪だ・・・。」



昨日まで生活感に溢れていた筈の家の中が、
今朝起きた時にはモヌケノ殻なんて信じられるだろうか。
自室以外の部屋と言う部屋の荷物が消え失せていたなんて信じられるだろうか?
自室から出て違和感を感じ、リビングに足を踏み入れて思考が停止してしまったのは仕方ない事ですよね?

唯一残されたテーブルの上には一つの茶封筒。
それを喪失感半端無い気持ちで封を開けて確認する。
書き残した人間はやはり自分の親で、
正直、頭でも沸いているのでは無かろうかと心配する程酷い内容だった。

要約するに、
【念願だった海外移住しまーす!
二兎の貯金のおかげで、パパとママ少ししかお金貯めなくてすんだぁ☆ありがとー☆
全額持って行くのは可哀想だから、少しだけ残していくね!二兎、お金貯めててくれてありがと!
一年に一度くらいは戻るから元気に過ごすんだよ!!パパとママ応援してるから!!!】

封筒の中には手紙と一緒に20万円のみ。
記帳しに行ったばかりの通帳からは貯めに貯めた数字が消えていた。
あれ?本人以外が下す時って手続き面倒じゃなかったっけ?
暗証番号教えて無かったよね??

いや、と言うか。


「お前等の為に貯めてた訳じゃねえからああああああ!!!!!!」



現在25歳、如月二兎。
声優志望のしがないアルバイター。
声優に成る為に入用金として貯めていた金を一瞬で持ち逃げされた。
これ程までに殺意沸く瞬間があろうか。あったとしても犯罪ですよこれ。


「どうしろってんだよ・・・。」


手元には20万。
今自分が力無く腰を落としているこの家の家賃10万円。
そして水光熱費、通信費諸々。
どう考えたって、20万では足りない。
電気とか水道とか使い過ぎだろお前等・・・。



「どうしろっていうんだよぉ・・・!!」



全てはこの最低最悪な一日から始まった。




【プロローグ】




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