小説

□姉妹の奇妙な学園生活@
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1章.対比的な姉妹

1.優秀な姉の失敗


______少女は困っていた。

私は天才だった。
名前はキルメア=K=ノックスといいます。
自分で言うのも何ですが魔王の血族でもあるノックスのひとりで、その血筋に多く継承される可能性がある膨大な魔力を基に、様々な魔術を覚え、自分なりに改訂し新しい魔術を作り出すことができる為に自他共に認める天才として歩んで参りました。

私は学生でもあります。
通うのは私立トリスメギトス魔道学園。
様々な魔道を研究し、それを修士する生徒たちの通う学園。
そこに妹と共に通っているのです。

妹の名前は"コルセア=O=ノックス"。
努力家だけど、どうにも魔術の才能が無いらしく授業では失敗ばかり。
クラスが違うため、詳しくは解らないのですが実技訓練では失敗続きだという噂は度々聞いている。
そんなこともあってか、この日も深夜遅くまで椅子に座り込み魔術の勉強をしていました。

いつもなら美しい銀髪の妹なのに、最近寝不足だからかハリが見えません。
目の下には隈があり、健康的には見えない。
部屋に帰って部屋着である黒いドレスには着替えましたが、未だにそのままで寝間着にも着替えてません……

時間は午前2時。
明日も朝早くから授業があり、このままではあまり長く寝られないでしょう。
流石に見ていられなくなった私は、声をかけることにする。

「コルセア、まだ起きてますの?もう夜中の2時ですわよ?そろそろ寝ないと……」
「お姉ちゃんには関係ない」

私に視線も向けず、淡々と答えた。
寝不足もあるからか少し当たりが冷たいですわね……

「関係ない……か。でも無理をしてもいい結果は……。確かに気持ちは分かりますが」
「分かる……?お姉ちゃんには分からないでしょ!私がどんな思いで学園に行ってるのか!少し学べば直ぐに結果が出る天才のお姉ちゃんには分かりっこない!放っといてよ!!」

急に怒りの表情を顕にした妹に近くにあった本を投げ付けられた。
その本は額に当たり、私の額から赤いものが床のカーペットに垂れる。

「っ!?……あ……ぅ……」

少し私は呆然としながらも、怒らずゆっくりと宥めます。今のは確かに私の言い方が悪かったのですから。
妹の表情は、冷静になり自分の行動に戸惑ってる表情ですわね……
自分を傷付けてしまわないようにちゃんと私が悪かったと伝えませんと……

「痛いですわ……ごめんなさい……確かに少し言葉が過ぎましたわ……」
「っ!!」

そういうと妹は近くにあった上着を持って走って部屋から出ていってしまった。
何が悪かったのでしょうか……。
それよりどうしましょう。追い掛ける?
いいえ、今、追い掛けてもどの様に声をかけたら良いか……わかりませんわね。
とりあえず……

私が指を鳴らすと床に小さな魔方陣が現れ、黒い猫が召喚された。
その猫は魔物。所謂使い魔だ。尻尾は3本生えており、眼は赤く輝いている。

「貴方に命じます。コルセアに不埒な輩が声を掛けないか見張っててください。もし、何かあったら私に連絡をしつつ、敵を破壊しなさい!」

命令を聞き終わると黒い猫は低い声で『御意』と言い、消えていった。

「……はぁ。私は天才なんかじゃありませんわ……。苦しむ妹ひとり救えないなんて」

先程、自分で天才だと紹介しましたがそれは訂正することを心に決めつつ立ち去った妹のことを考える。

コルセア、大丈夫かしら。
とりあえず額の怪我を……いいえ、私に非があったんだし忘れないように暫く、そのままにしときましょう。
それに……妹が私に傷をつけるなんて、成長しましたわね。
お姉ちゃんとして複雑ですが、何処か嬉しさもありますわ。

そう呟き、私は額に絆創膏を貼り今日は寝ずに朝まで待った。

朝になっても帰ってこなかったが猫から報告があり、そのまま学園に登校するみたいだと聞いて安心し、私も学園へと向かった。


__________

私は妹より一足先に自分のクラスに入った。
もし、下駄箱で顔を会わせたらコルセアの事だから気まずいでしょう。
少し、時間を置いてあげるべきだと判断しました。

椅子に座ると様々な人から額の傷のことを聞かれた。
正直、煩いですわね。
私の実力ばかり見て、友人としては関わる気もない人ほど詮索したがるもの。
そんな人たちの相手をしている暇があるなら、魔術の研究をするなり妹と話すなりしたいですわよ。

『ヤッホぃキルキルっちー、おはよう!』

まぁ、友人として関わる人も人で面倒なんですけどね。
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