小説
□コイントス
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プロローグ
雨が水溜りに落ち、波紋を生む。
無数に、不規則に。
雨音は人気のない路地裏にも静かに響く。
そこに、傘もささずに佇む人影が1つ。
人影は上着のポケットからコインを1枚取り出し、指で弾いた。
ピンッと音を立て、コインはクルクルと宙を舞う。
手の甲で受け止めると、裏だった。
「光と闇、善と悪。人が思うそれは、所詮偽られた裏表ってか」
人影の足下には、2つの肉塊。
1つは人間だ。
もう1つには鳥のような翼が1対、背に生えている。
元は純白であっただろうそれも、今はドス黒い血に染まっていた。
「守れなくて、ごめんな」
一言呟くと、人影は肉塊に手をかざす。
すると肉塊は黒い炎に包まれ、やがて跡形もなく消え去った。