小説

□つるぎ
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「つるぎさん、アオに話って何なんだろうね」
「う〜ん……わからないわね、私もあいつのことを全部知ってるわけじゃないし。どこから来たのか、何がしたいのか、………本当は誰なのか、とかね」
蘭ちゃんは少し寂しそうに笑った。
「ってことは…つるぎさんもここの人間じゃないのか?」
御巫くんが聞く。
「ええ。つるぎも来たのよ。…あの湖から」
「えっ!じゃあ、住民の人達がフレンドリーだったのは…」
「つるぎさんのことがあったから…か」
「まあつるぎはかなりのことやらかしたんだけどね?」
「やらかした…って、どんな事を?」
「今だから話題に出せるけど…あいつ、湖から出てきていきなり暴れ始めたのよ」
けろっと蘭ちゃんは言うけど、正直それで済むことじゃないと思う。
「あ、暴れ…?」
「そ。あいつの話では湖から上がった自分の目を見たのを最後に意識が無くなったらしいけど…どうだかね」
「そんな…どうだかねって…」
「信じてるから側に置いてるけど、信じきれるほどの情報をくれてないのは確かなのよね」
蘭ちゃんは真顔でそう言った。
「貴方はどうなの?」
「…え?」
そして、僕に話を振ってくる。
僕は質問の意図がわからず、首を傾げた。
「アオちゃんよ。随分と信頼してるみたいだけど」
「アオは…家族みたいなものだし」
「違うわ。貴方はあの子をどこまで知ってるの?」
「…どこ、まで…って、」
「好き嫌いは?趣味は?誰と仲が良い?どんな団体に属しているか?好きな人は?親は?兄弟は?同郷の友達は?どこから来たのか?何をしたいのか?」
蘭ちゃんは僕の目を真っ直ぐに見る。
僕は蘭ちゃんの質問の意図がようやく読めた気がした。
「本当は何≠ネのか?」
ーーーーあの子は一体何者なのか?
「すべて知ってる?それが本当だと言える?」
「…言えない…何も知らない」
『信じてるから側に置いてるけど、信じきれるほどの情報をくれてないのは確かなのよね』…その言葉がもう一度聞こえた。
もしアオが何か有害なものだとしたら?
もしそれをずっと隠して、 今まで過ごしてきたとしたら?
それを僕に知られたくなかったとしたら?
…もし、さっきのアオの態度。
あれが、つるぎさんに正体を暴かれることに怯えていたとしたら?
もし、今。
アオの正体について、つるぎさんが問い詰めていたらーーーーー
「っ‼‼」
「どこ⁉今の!」
「…城だ‼」
ドンッと大きな音が鳴る。
何かが爆発したような、そんな音が。
その音のした方を見れば、さっきまでいた城からもうもうと煙が上がっていた。
「急いで城に帰らないと…!ごめんなさい、湖はまた後でってことに…」
「いいよ、そんなの!行こう!」
「アオとつるぎさんはまだ城にいるんだろうか⁉」
「わからないわ!とにかく早く…!」
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