小説

□つるぎ
1ページ/3ページ


「ああ、そういえば、俺は剣(つるぎ)だ。ここの兵士団の団長をやってる」
つるぎさんは片手を挙げて自己紹介した。
「…ところで蘭、こいつらここで面倒見ていいのか」
「ふふ、つるぎってば、私がだめって言うと思う?」
「言わねーと思うから言ってる」
にや、と蘭ちゃんが笑う。つるぎさんも返して笑った。
「え、と、いていいんですか?」
「ええ!私が許可するわ!」
「ありがとうございます!」
「やた!よかったですねエナ様!」
「うん、ひとまず湖に行ってみたいな」
「案内するわ」
蘭ちゃんが立ち上がり、襖まで歩いていく。
「ちょっと待て」
部屋から出て行こうとする僕たちを、剣くんが引き止める。
「おい、お前。話がある」
アオの腕をぐい、と引っ張って留めさせる。
「……わたし?」
少しだけアオの笑顔が固まった気がした。
「えと、じゃあ…蘭ちゃん、エナ様お願いね」
「う、うん…つるぎ?どうしたの?」
蘭ちゃんも不思議そうにつるぎさんを見ている。
「お前は気にしなくていいよ」
つるぎさんはきっぱりと言った。

「…で、話って、何かな」
「………」
「何も言わないなら私エナ様の近くにいたいんだけど」
「………………」
はあ、とアオがため息を吐く。
つるぎはじっとアオを見つめているのみだ。
「あのさ、本気で何の用…」
「わかるんだよ、俺」
「…は?」
ふう、と今度はつるぎが浅く息を吐いた。
「魔力の流れ…っつーのか?ここには魔力が行使されてるとか、こいつは魔力を使おうとしてるなとか、この道具には魔力があるとか………」
「………………………」
「こいつは異常なほど魔力を持ってるくせに、その魔力を『人よりちょっと魔法が得意』程度に抑えることに使ってんな、とか」
アオの呼吸がだんだん荒くなっていく。
つ、と汗が一筋落ちた。
「……きみは…」
「?」
アオがつるぎの目をしっかりと見つめる。
その目には恐れと、安堵の色があった。
「…きみは私の…運命のひとだ」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ