小説

□バレてた
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始業式の前日、春休み最後の日。
僕はアオと一緒に近くのショッピングモールへ買い物に来ていた。
「うーん、アオ、これなんかどうかな?」
「エナ様が見繕ってくださったものならフリルのワンピースでも喜んで着ます!」
「フリルは苦手なんだね。わかった、じゃあこっちは?」
昨日アオがたったの数着、それもどシンプルなものしか衣服を持っていないと知り、18歳の女子としてそれはどうなんだということで今日ここに服を選びにきたのだ。
「アオってどの色が好きだっけ?」
「んー、悩みますねー。これといってないですけど……白、ですかね」
「白かあ。じゃあこのワンピースなんてどうかな」
「わ!あ、えと」
「気に入った?」
「え、あ、はい、かわいいです」
「じゃあこれにしよう、それともうちょっと見てみようか」
「は、はい!ありがとうございます!」

「ふうー、楽しかったねー」
「はい!…でも、いいんでしょうか。こんなに買っていただいて…」
「いいんだよ。今までアオにお金かけなさすぎたんだから」
でもちゃんと着てね。
そう言うと、アオはこくこくと頷いた。
すると、アオがふと僕の後ろに目を留めた。
「どしたの、アオ?」
「エナ様。あれ、御巫くんじゃないでしょうか」
そう言って指差す先には、確かにパーカーにジーパン姿の御巫くんがいた。
「ほんとだね。買い物かなぁ」
偶然にも見つけたのが嬉しくて、ついつい顔が緩んでしまう。
「エナ様」
「ん?」
「エナ様って御巫くんのこと好きですよね」
「んっ」
噎せた。
「ななな、なんで⁉どうして⁉」
「え…見てれば…?」
至極当たり前といったふうにアオが言う。
「そ、そこまでバレバレだった⁉どうしよう、御巫くんにバレてたら!」
「いえ、バレてたらもなにも…」
アオは少し視線を落として言う。
「私も本当にそうだとは…」
「カマかけたの⁉」
「す、すいませ…」
アオが気まずそうに言う。
「でも、大丈夫です。応援しますよ!」
「う、うう…」
体から力が抜けていく。
がっくりと肩を落として、アオに慰められながら帰路に着いた。


明日からは新学期!
いよいよTHGA組に編入だ。
いつになくわくわくを感じながら、僕は1日を過ごした。




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