小説

□青春のかおり
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「うん、それは金哉くんが謝らないとな。たとえ君が気に入らなくても、その人は誰かの大切な人なんだよ。そんな人からしてみれば、君に怒りたくもなるだろう?」
「…っ、うん」
「ほら、江那くんとアオちゃんにごめんって言わないと」
「…ごめん、悪かったよ」
「い、いや僕も大人げなかったっていうか…」
「うーん、胡散臭い自覚はあるから否定できなかったのもあるし」
「なんだそれ」
御巫くんが呆れたようにつぶやく。
少年、金哉くんは申し訳なさそうにこちらを見上げた。
右、左と見て、何かを確認すると、こっち、と頭を下げさせて僕らに耳打ちする。
「…ごめんな、羨ましかったんだよ。オレ、将来菊のこと嫁にもらうつもりだから。」
「えっ⁉」
「まずそれまでに勝たないとだけどな‼内緒だぞ!」
「う、うん」
ちらりと磯辺さんを見る。磯辺さんはわかっているのかいないのか、にこにこしてこちらを見ていた。
「昔の子はすごかったんだなぁ…」
お茶を汲んできた菊とまた口喧嘩をしている金哉くんを見て、途方にくれたようにつぶやいた。



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