小説

□進展とか出来ない
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理想とは少し違うものの、なんだかんだ予定を立てるのは楽しく。
エナ様と2人で御巫くんの部屋に行って、話し合って。
結局近くのアミューズメント施設に行くことになって。
私もエナ様ももちろん御巫くんも、理想と違うことはあれどうきうきと約束の日まで指折り数えていたのだが。
「なんでこうなるの〜〜〜〜⁉」
「運悪すぎだろ!」
「空気読んでよ…タイミングって言葉知らない⁉」
当日3人でアミューズメント施設まで歩いていたところ、ふっと周囲の喧騒が無くなったと思えば、周りは木が生い茂る森の中。
そう。私達は、また何処かへトリップしてしまったのだ。
「まったく…ここどこかなぁ…日本ではあってほしいけど…てか、暑いなあ…今夏…?」
「そうだな…」
「とりあえず、道を探しましょう。人のいるところに出なければ…ん、」
大声を出して少しスッキリした私は、ふとあることに気づいた。
「どうかしたの?アオ」
エナ様が不思議そうに私の気色を窺う。
きっと、私の顔が固まったのがわかったのだろう。
「ええ……音が。何か来ます」
私達の、斜め右前。そこから、何かが素早く近づいてくる。木を飛び越えて移動しているのか、ザワザワと音が聞こえた。
「ち、近づいて来てるよね…これ」
「はい」
御巫くんが身構える。エナ様はわたわたと慌て始めた。私は音に意識を集中して、右手に力を集め始める。
(もうすぐそこまで来てる…そろそろ姿が見えてもいいんだけど…)
さらに近く、近く。ふと、木々の合間から黒い色が見えた。同時に肌色も。
どうやら人間のようだ。
それに向かって叫んだ。
「君は誰⁉ここの人⁉」
するとその人が姿を現した。
それはまだ幼さを残した少女だった。
黒い髪と黒い目をしていて、前髪は私達から見て右に流れている。
少女という事はハッキリするが、どちらかというと少年のような出で立ちではあった。
(…?この子、なんか…)
なんとなく既視感を覚えた。
しかし、どこで見たのかは思い出せない。
「ここの人も何も、この森はあたしの家の森だもん。あんた達こそ誰?」
きりっとした表情で、警戒しながら木から降り、こちらへ近づいてくる。
「キ、キクぅ…」
「大丈夫…?」
少女の降りてきた木から、さらに2人の少女が降りてくる。歳は彼女と同じくらいか少し上だろうか。2人の顔は似通っていたが、髪の色は全く違う。1人は金色の髪で、もう1人は黒髪だった。どちらも毛先は銀色だ。
金色の髪の子は肩の少し上、黒髪の子は
「メルト達は出てこない方がいいよ。3人いるけど、2人は男だよ」
「ひっ………」
「わかった。姉さん、ここにいよう」
どうやら2人は姉妹のようで、金色の髪の子が姉らしい。
金色の姉、黒髪の妹。毛先が銀色、男が嫌い。メルト。
私の中でピースが急速にはまっていく。
「大丈夫だよ、メルトちゃんにハルトちゃん。この2人は君達に危害なんて加えないさ」
私がいつも彼女達の前で見せるような笑顔を作って、一言一言しっかりと発言する。
私の気持ちは、さながら推理を披露する探偵のようだった。


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