本
□好きと叫べば。
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「そーいやぁ財前。昨日謙也んちいったんやて?」
「……えっ?な、なんで知って…」
「昨日、謙也から聞いてな。LINEで。」
「……へぇ。」
部室につくと、思ったより早く来すぎとったらしくて、いつも一番にきとる部長と二人きりになってしまった。
ああもう、気分悪い。
「……財前はさぁ、謙也のことどう思っとる?」
「はぁ?どうって?」
「いやぁ、あるやん。好きとか、嫌いとかさぁ?」
「…はあ?!?!」
そんなの、…
好き。
「べべべべ別に!!!ただの先輩っすわ!!!な、なんでそんなことっ!!、」
「ははっ、すまんすまん。そんな動揺させるつもりなかったんやけど。」
「ったく、…走り込み行ってきますわ!」
なんなんやあの人は!やってられへん!
態度分かりやすかったかなぁ。あーもうやってもうた。
羞恥心に頬が熱くなり、冷たい手で頬を包んだ。
走り込みが終わり、それでもあっという間らしく、自転車置き場には、まだ三台しかおいてへんかった。色的に、…謙也さん。
タオルをとりに部室のドアノブに手を伸ばすと、謙也さんと部長の話し声が聞こえた。
「そんでなぁ二回も負けてな、新しいゲームやろおもたら財前が……」
それは昨日の話やった。なんとなく、ドアノブから手を離した。
「本間に、すきなんやなぁ」
部長の言葉に、俺は一度フリーズした。
好き?謙也さんが?誰を?
鼓動がまるで高鳴った。自惚れちゃうけど、話の流れ的に……
俺?
「……まあ所詮、ただの先輩やからなぁ」
「……謙也」
俺がさっき、部長にやけくそにいった言葉を、聞いていたのかも知れない。
すると謙也さんは、そんなことより、と陽気な声をあげて話題をかえた。
俺の目には、多分、膜が張っている。
この思いは、受け入れてくれるのだろうか。
あなたに、好きと告げれば。
ここから、好きと叫べば。