□殺してしまったのは。
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ある日の午後。大好きな彼の匂いでいっぱいの部屋で、俺はただ1人、寝そべっていた。

「(謙也さんおそいなぁ…)」

いつ最後に顔を合わせたのかは覚えていないが、腹も減ったし、服も着替えたいし、何しろあってたくさん話を聞きたい。


俺の生活は、俺の恋人忍足謙也に支配されている。食事、トイレ、着替え。全て彼の前のみ許される。本来なら高校3年である俺は、学校に通い、家族や友人、恋人と幸せな毎日を過ごしているはずだった。それを、彼は許さなかったのだ。

監禁生活が始まった当時、俺は何度も何度も脱走をはかった。でも彼は決してそれを許さず、この部屋で、中毒になりそうなほどの快感に浸り、外の世界がどうでもよくなるほど心も体も彼に支配される。
今となっての俺は、対抗心も希望も忘れ、ただ彼だけが欲しい。そう、思うようになった。

(謙也さん…)



ーーーーーーーーーーー


「ひかる、」

聞きなれた声に重い瞼をひらくと、そこには謙也さんがたっていた。
どうやら俺は眠ってしまっていたようだ。

「あんな、今日授業で解体について教わったんや。」
「…解体?」
「うん。それとな、腕とか切断した時の対処法みたいなんも習ったんや。」
「へぇ……」

「せやから、なあ、光。」


先の尖った針が、俺の肩に。

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