□夢でいいから
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幸せな夢を見た。

俺が、謙也さんに浮気される夢や。
ははっ、浮気される夢が幸せなんて意味わからんかも知れんけど、俺達は確かに夢の中で付き合っていた。夢では俺と謙也さんは、手を、繋げたから。

そんな幸せなことあるか。浮気とか、そんなんどうでもええ。
付き合ってる、それが幸せで仕方なかった。


「ーーーーる!光!」
「……ん…………だれ?」
「俺やで!謙也さんやで!」
「……ん……ん?ん?ん?ええ?はあああああ?!?!」
「お、おはよう」
「謙也さん?!?!?!?!なんで、おおおおるん?夢?!夢かなこれ?!」
「夢ちゃうよ!居るてここに!」
「な、なんで居るんですか」
「なんでて、今日遊ぶ約束やったやろ!」

ああ、そう言えばそうだった。
いや、忘れた理由じゃない。あまりに幸せな夢の余韻に浸っていただけだ。

「光、めっちゃ苦しそうな顔して寝てたで。なんか悪い夢でも見たんか?」
「え?……そうですか?」
「うん、行かないでって、うなってたで。」

夢できっと、あんたの事引き止めてたんや。
苦しそうになんて、夢が夢になっただけなのに、欲張りやなあ、俺。


「でも、めっちゃええ夢やったんで。」
「そ?ならええんやけど。」

さすがにこのままでは失礼だと起き上がろうとすると、謙也さんの顔つきが変わったことに気が付いた。

「……なあ、それさ、どんな夢?」
「え、どんなって……?」
「好きな人とか?」
「え?!?ななななんでっ!」
「教えて。お願い。」

見透かされるような目に思わず俺は息を飲んだ。
もしかしたら、気付いとる?名前呼んでもうたとか?
どないしよ、嫌われたりしたら、俺っ!

「あ、あの、俺っ!」
「やっぱり好きな人の夢なんや」
「……っはい……」
「んで、どんな夢?」

やっぱり、……バレてる?
そんなの、そんなの。

「え、と、 好きな人と、俺が、つ、付き合ってて、その、」
「付き合ってて?」
「……浮気、される……夢」

「ふーん……」

な、なんか声冷たない?
ど、どしよ。なんか、なんか言わな。

「で、でも、キモイとか、言われたわけと、……ちゃう、し…」

ななななななに余計なこと言うとんねん俺!!!!
あーもう!!!

「う、嬉しかった……です……」


「……そんなに好きなんや…」
「っ、……好き、です。」

あんまり顔見せた無いから横目で謙也さんの顔を確認しよおもたら、うつむいててようわからんかった。

「でもアホやなぁ、俺やったら光相手に浮気なんて絶対せんのになー……」

「えっ……??」

い、今なんて言うた?
なんやろ、めっちゃ嬉しい。ってか、あんたなんやけど。

「ええなぁ光に思われとるなんて、」

羨ましい。

小さかったけど、確かにそう、聞こえた。
羨ましいってどういうこと……?俺に思われてるそいつが、(謙也さん)が、ずるいっちゅーことなんやな?

「さーて、いくか光!」

待って。なんて言ったらええかわからんけど、

「あ、あんな、っそ、その人っていうのは……!!」




俺たちが恋人になる、5分前のこと。

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