本
□今夜はきっと、泣いてしまう。
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俺には好きな人が居る。
笑顔がキラキラしとって、皆に好かれとって、部長ほどやないけどなかなかの美形や。
めっちゃモテるから相当な競争率やし、もし俺がおんなやったら迷わずアピった。
ーー問題は、そこ。
俺が女やったら、男を好きになるんは当たり前やし、ふられても幾分マシやと思う。謙也さんは告られるとめっちゃ喜ぶから、キモがられることもあらへん。
それなのに!
俺は、俺は男なんや!
女に告られても、あぴられても、これっぽっちも嬉しくなんかあらへん!(俺も謙也さんくらいモテる)
謙也さんにしか興味無いのに、性別のせいで競争のスタートラインにすらたてへん!
ほんまため息しかでぇへんわ!
「財前?」
「うわぁっ!」
そんなことばかりぐちゃぐちゃ考えとったら、ロッカー整理しとった手が止まっとったみたいで。走り込みから戻ってきた謙也さんが困った顔してのぞき込んできた。
「な、なんや、忍足先輩か…なんかようですか?」
「んー、いや、なんでも。なんかぼけーっとしとったから。」
「さい、でっか。」
少しでも気にかけてくれとった事が、なんだかこしょばい。
心臓が、うるさくなる。
「そういえばさぁ、財前、」「謙也ー!!!」
「げっ!白石」
「走り込み、終わったんか?」
「お、おう」
「せやったら次!背筋休まず200回!」
「エェーっ!!!」
「ええからはよせい!」
向かってる途中なんやこそこそ話しとったけど、まぁ、どうせくだらへんことやろ。
一つ、ため息をついて、俺はロッカーを閉めた。
ーーーーー
最近俺の中で、ブーム、というか、クセ、が出来てしまった。
それはなんと…気付いたら謙也さんの情報を集めてもうてるっちゅー事や!
キモイ!キモすぎる!ミーハーやぞ、ミーハー!
好きな食べモンは牛すじと青汁だとか、行つけの美容室とか、イグアナ飼っとるとか!
調べとるわけとちゃうんで!
部活で謙也さんが友達とくっちゃべっとるのをつい聞いてもうて、気づけば謙也さんの情報だけ覚えとるっちゅー!
だああああああああ!!!!!!
末期や!!!!
少し嬉しかったり、驚いたりもするんやけど、最近知ったんは少し、複雑なもんや。
それは謙也さんに、好きな人がおるっちゅー。
あー、自分で言って辛い。
しかもその女、話によるとめっちゃ態度が悪いやつらしい!名前知っとったら怒鳴ったるのに!
せやけど……謙也さんは相当、好きらしくて。
『 絶対叶わん恋やけど、夢だけは、みてたいんや。 』って。
あーもう、ほんまつらい。
世の中、何でこんな不安定なんやろ…
「…こんなに、…大好きなのに、」
早く来すぎた部室で、つぶやいてみた。
女々しいで、ほんま。
「なにが?」
「…え…」
今更感じた人気に振り返ると、そこにたってたんは…
ーー俺の想い人、謙也さんやった。●●