短編


□2人遠足
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「うるっせえな…。」
並んで座ったバスの座席、隣の晋助が怖い顔をしている。
1番後ろの席に並んだ楽しそうな女性6人組、久しぶりの再会かお喋りが止まない。学生時代の友人らしい。
俺と違い此奴の守備範囲が狭いのが、珍しく凶と出た。

ほら、川の水が青い。流れる景色を指差しても機嫌は直らない。
仕方ない、ここは俺がマダムに一言すべきかな。
一言しなくても良い道は無いものか。
そっと覗き見るも、窓側に座る晋助は、俺の言葉には知らぬ振り。顔は窓の外に向けていた。

「晋助、ほら。飴も、んまい棒もあるぞ。」
今は少ししか許せんが酒だって。
声をかけ続けていると、また後ろで笑い声が上がる。ああ、舌打ち。
堪らずその顔を引き寄せ胸に抱き、後ろを振り返る。

「お姉様方、お楽しみの所失礼します。もう少し…。」
静かにお願いします、ウチの気難しいコレが、煩いんで。
人差し指を立てて「静かに」のジェスチャーから始まり、身振り手振りで伝える。
片手で獣を抑えながらなので、上手く伝わるように俺も必死だ。

途端に、きゃあっと彼女達は湧き上がった。

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